2015 Fiscal Year Research-status Report
UBMスパッタ法によるイオンアシスト効果を利用した金属ガラス薄膜の膜質制御
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26820309
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小畠 淳平 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00566424)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金属ガラス / アンバランスドマグネトロンスパッタ / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属ガラス膜の形成に対して、アンバランスドマグネトロンスパッタ(UBMS)法により、従来の真空プロセスにはないArイオンアシスト効果という新たなパラメーターを導入し、金属ガラス膜の新たな膜質制御技術を確立するものである。本年度では、Ti-Cu系金属ガラス膜について、基板バイアス電圧を0~-300Vの範囲で変えて作製し、①X線反射率測定による膜密度の測定、②ナノインデンテーション法による膜の硬さ・ヤング率の測定および基板変形量からの膜の内部応力の測定、③各種酸性溶液中でのアノード分極測定を実施した。実験の結果、①基板バイアス電圧の増加に伴い、膜密度が低下し、最大で約18%も低下することが明らかとなった。膜の密度とAr含有量が直線関係であることから、膜密度の低下は、Arイオンアシスト効果による膜構造内へのArの導入によるものと思われる。②基板バイアス電圧の増加に伴い、膜の硬さとヤング率が変化することが分かった。硬さ・ヤング率は-50Vで最大値を示し、その後、減少する傾向を示した。膜の内部応力を測定した結果、内部応力値は、硬さ・ヤング率と同じ変化をすることが分かった。このことから、膜の硬さ・ヤング率は、成膜時の内部応力に支配されることが明らかとなった。③硫酸水溶液および塩酸水溶液中でアノード分極測定を行った結果、高い基板バイアス電圧(-200V以上)を印加した膜では、印加せず形成した膜よりも耐食性が向上することが分かった。これは、報告されているほぼ同組成のTi-Cu系バルク金属ガラスよりも優れた耐食性であった。本年度の研究により、UBMS法によるArイオンアシスト効果は、金属ガラス膜の機械的特性と耐食性を改善できる有力な成膜手法であることが実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
UBMS法によるArイオンアシストにより、金属ガラス膜の構造と機械的特性を制御できることが分かり、さらに、構造と特性の関係性についても一部解明できた。以上のことから、計画通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
UBMS法でのArイオンアシストによる構造変化を詳細に調査し、熱的特性や機械的特性との関係性を解明する。特に、膜の自由体積の変化を明らかにする必要がある。ただし、本研究で発見された膜構造内への多量のAr導入は、膜の密度変化をもたらす。よって、従来の密度変化から自由体積変化を解析する手法においては、膜密度の変化に対するAr導入と自由体積の寄与率を明らかにする必要がある。そこで、自由体積変化については、示差走査熱量分析も併用して考察していく。
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Remarks |
所属研究機関による研究タイトルの紹介
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Research Products
(3 results)