2014 Fiscal Year Research-status Report
精密かつ柔軟な分子設計が可能な鞘部位を持つパイ共役ポリマーの創製
Project/Area Number |
26820314
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
本柳 仁 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (10505845)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 精密重合 / パイ共役ポリマー / リビングカチオン重合 / 特異構造高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、精密かつ柔軟な分子設計が可能な第三世代のパイ共役ポリマー材料の創製へ向けた合成アプローチとして、側鎖に精密設計したポリマー鎖を有するパイ共役ポリマーを効率的に合成する手法の確立を目指した。そして、様々な構造を有する主鎖と側鎖をスクリーニング合成することでポリマーライブラリーを構築し、側鎖ポリマーの機能と主鎖構造の機能が協奏した新規機能性材料の創製を期待した。本年度の成果として、[1]ポリマー鎖を側鎖に有するパイ共役ポリマーの新たな合成手法の確立と[2]側鎖ポリマーと主鎖構造の機能が協奏する外部刺激応答性蛍光材料の開発に成功した。 まず[1]について、パイ共役ポリマー前駆体となる重合性官能基を有するマクロモノマーをリビングカチオン重合を利用することで合成することに成功した。この結果、多様な重合性官能基を末端に持つマクロモノマーの効率的な合成が可能となり、得られたマクロモノマーの末端基を反応させることで、ポリマー鎖を側鎖に有するパイ共役ポリマーを合成することに成功した。このような手法による合成はこれまで報告例がなく、本研究が初めての成功例である(Journal of Polymer Science, part A: Polymer Chemistry 2014, 52, 2800-2805. Kobunshi Ronbunshu,in press.)。 続いて[1]で得られた新規パイ共役ポリマーについて、溶液状態での発光特性を評価した結果、溶媒の種類や温度に依存してJ会合体を形成し、それに伴い発光色や溶液色の可逆的な変化が誘起されることを明らかにした。さらに、種々の側鎖ポリマーを持つパイ共役ポリマーを合成し比較検討した結果、発光挙動と側鎖ポリマーの化学構造との強い相関を明らかにし、側鎖ポリマーを精密に設計することでこれらポリマーの自己組織化挙動ならびに蛍光発光特性を制御可能であることを見出した(submitted)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は、本研究の進行に次の三つのステージを設置している。[1]グラフト鎖を有するパイ共役ポリマーの新たな合成手法の確立。[2]機能性側鎖ポリマーに覆われた多様な種類のパイ共役ポリマーライブラリーの構築。[3]基礎的な物性評価や主鎖ポリマー鎖の配向制御に伴うデバイス特性評価。そして、平成26年度には[1]を重点課題としてパイ共役ポリマー前駆体を重合性官能基として末端に有するマクロモノマーの効率的な合成手法の確立とその重合について検討すると同時に、得られるポリマーの蛍光挙動やポリマー鎖の会合挙動について調査する計画であった。 研究実績でも触れているが、[1]の新規パイ共役ポリマーの合成手法(主鎖骨格としてポリフェニルアセチレンとポリフェニレンブタジニレン)の確立に成功している(Journal of Polymer Science, part A: Polymer Chemistry 2014, 52, 2800-2805. Kobunshi Ronbunshu,in press.)。さらに、得られたパイ共役ポリマーの発光挙動を詳細に検討した結果、特異な発光挙動を示し詳細に検討することで、側鎖ポリマーの化学構造と強い相関があることを明らかにし、外部刺激応答性蛍光発光材料に用いることが可能であることを見出した(submitted)。これは、発光がON/OFFする従来の蛍光センサーとは異なり、発光色の色調が変化するという新しいタイプのセンサー材料である。このように、申請者は当初の計画通り実験を進行し、想定以上の成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実験計画通り平成27年度は実験計画における[2]と[3]の課題を集中的に実施し、多様な種類のパイ共役ポリマーライブラリーの構築とそれらの物性評価やポリマー鎖の会合挙動・配向制御について調べる。すでに平成26年度の成果において、末端にパイ共役ポリマー前駆体の重合性官能基を導入した機能性マクロモノマーを重合することで機能性側鎖ポリマーに覆われたパイ共役ポリマーの合成手法を確立しており、 (a) 異なる重合性官能基の導入や、(b) ポリマー鎖に親水性ポリマーやジブロックコポリマーを用いることで新たなパイ共役ポリマーへの展開を行い、ライブラリーの構築を目指す。得られたパイ共役ポリマーライブラリーについて、まず溶液中での物性評価を行う。溶液中においてポリマー鎖同士の相互作用によって凝集し、ナノ構造体が得られ吸収特性や蛍光特性が変化する。そこで、側鎖の機能性に応じて、温度変化やpH変化といった外部刺激によって会合状態を変化させることで、側鎖に導入したポリマー鎖由来の特性と主鎖であるパイ共役ポリマー由来の特性が協奏的に機能しているかUVスペクトルや蛍光スペクトルを用いて検討する。 現在、主鎖骨格ポリマーとして新たにポリチオフェンを有するパイ共役ポリマーの合成を検討している。このポリチオフェンは導電性材料として幅広く用いられており、得られるポリマーの配向制御による異方的な電子伝導性を示すことが期待できる。さらに、白金原子を組み込んだパイ共役ポリマーの合成もあわせて検討する。一方、側鎖ポリマーとして金属イオンと相互作用可能な機能性ポリマー鎖の導入を試みており、添加イオンによる主鎖パイ共役ポリマー由来の特性変化を評価する。
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