2014 Fiscal Year Research-status Report
キノン架橋ゼラチンを用いた生体組織用接着剤の開発と耐水接着の原理解明
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26820324
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Research Institution | Osaka Municipal Technical Research Institute |
Principal Investigator |
山内 朝夫 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究員 (80416304)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 接着タンパク質 / ポリフェノール / 酸化 / キノン / ゼラチン |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、耐水接着性の評価法を構築した。接着剤の耐水性を評価する方法に、JIS規格における木材の引張せん断試験(K6851 7-2耐温水試験)がある。しかし、この方法は被着材である木材およびサンプル調製に煩雑さが伴うため、少数パラメータ条件で試験N数を大きくする必要があった。新たに構築した方法では、濾紙に挿んで接着したゼラチンサンプルを調製後、一定温度の温水槽に浸漬する作業を行って、自然剥離の有無を調べた。この濾紙を用いた評価法の有効性は、JIS K6851の試験において耐水接着性を示すキノン架橋ゼラチン(ヒドロキノンで架橋したゼラチン)と未架橋のゼラチンの濾紙サンプルを調製し、浸漬温度を比較することで確認した。 次に、構築した評価系を使って耐水接着性とポリフェノール構造の関係を明らかにし、耐水接着性が最も高いポリフェノール分子を選定した。市販や企業より供与された高純度のポリフェノールを用いて、単純ポリフェノールの水酸基の数と位置が異なる条件で比較した。その結果、酸化反応でキノン体と成りうるポリフェノール(オルト位とパラ位に水酸基が配位するポリフェノール)が耐水接着性を有し、水酸基の数が2個のポリフェノールが高い耐水接着性を示した。また、基本骨格が同じで分子量の異なるポリフェノールの耐水接着性を比較したところ、低分子量のポリフェノールが高い耐水接着性を示した。以上の結果を基に種々のポリフェノールを選別したところ、カテコールやカフェ酸などの分子種が選定できた。カフェ酸でキノン架橋したゼラチンは、耐水温度が50℃以上まで接着力を有し、木材の引張せん断試験(JIS K6851 7-2耐温水試験)での引張り強度は約4.2MPaを有していた(比較;未架橋ゼラチンの耐水温度は10℃以下、JIS K6851 7-2耐温水試験では測定前の浸漬で合板が剥離するため測定不能)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画(耐水接着の評価系の確立とポリフェノールの選定)を完了しており、未完了の計画がないため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、申請書に記載した平成27年度の研究計画(架橋ゼラチンの分析と生体組織に対する接着試験)を粛々と遂行する。具体的には「架橋ゼラチンの分析」は申請書に記載した方法で進めるが、「生体組織に対する接着試験」は簡略な方法が他の研究グループで報告があったので変更する。申請書では、被着体の細胞組織はラット表皮角化細胞層とし、培養表皮シートを調製する計画であったが、ブタ皮を用いたATSM規格(米国試験材料協会)の試験方法(F2255-05またはF2458-05)で基準化されたため、本研究でも準拠する。
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Causes of Carryover |
当初、設備備品として恒温水槽 [492千円(2X @246千円)]を購入し、剥離試験を行う予定であった。所属機関で所有のエアーインキュベーターを用いて予備実験を行ったが、本試験でも十分に使用可能であったため、新たな恒温水槽の購入を控えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
接着評価でサンプルの大量調製が必要で、ポリフェノールや酵素等の精製品(消耗品)を補充する(+30千円)。また、所属機関所有のアミノ酸分析計が故障しているため、アミノ酸定量キット等での代用を検討する(+20千円)。
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Research Products
(8 results)