2014 Fiscal Year Research-status Report
TLPによる難焼結マグネシウムの酸化皮膜を介した焼結挙動の解明
Project/Area Number |
26820330
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
岩岡 拓 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第一部 機械技術グループ, 副主任研究員 (50510898)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 粉末冶金 / マグネシウム / 液相焼結 / 金属間化合物 / ミクロ組織制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
粉末冶金法は,粉体の成形により部品形状を得て,その成形体の熱処理により粉末を結合(焼結)して部品の機械的特性を得る製法である.この成形と焼結によって他製法とは異なる特長(複雑形状,寸法精度,機械的特性,経済性)を持つ部品製造が可能となる.ゆえに,上記特長を失わずにマグネシウム粉末を焼結するためには,焼結を阻害する非常に安定な酸化皮膜を除去するのではなく,結合部の一時的溶融による酸化皮膜を介した結合方法,すなわち,一時的液相焼結が必要と考えた.その結果,単なる高密度化だけではなく,ミクロ組織制御の重要性が導かれた. 一時的液相焼結を達成するための合金系を見出すために,純マグネシウム粉末に各元素粉末(Al,Zn,Sn,Bi,Sb)を単独混合した5種類の2元系マグネシウム焼結合金を作製し,その焼結過程と強度特性を調べた. 各合金系の焼結温度と組織の関係から,焼結中に液相が生成し易く広範囲に分散する系は,低融点あるいは低共晶点をもつ系(Mg-Zn,Mg-Sn,Mg-Bi)であることが分かった.しかし,低共晶点は焼結中に過剰な液相を生じさせるため,高温まで安定して焼結するためには高共晶点を有する必要があることが分かった.したがって,液相焼結を達成するためには低融点かつ高共晶点をもつ系(Mg-Sn,Mg-Bi)が望ましいことが検証できた. しかし,両系は液相焼結が達成されていながら,その強度特性はMg-Sn系の方が優れていることが判明した.TEM観察により焼結界面に生成する金属間化合物が焼結を補助する役割を担うことが分かったため,金属間化合物の平均寸法の影響について調べた結果,2~3μmの寸法の時,強度特性が最も優れることが判明した.このミクロ組織の条件を満たしていたのがMg-Sn系であった. 以上の一時的液相焼結の過程および強度特性の支配要因について学会発表および論文投稿を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
融点および共晶点の異なる合金系の焼結組織と強度特性を調べることで液相焼結に有効な合金系を見出すことができ,本件の主目的は達成された.その過程で,まず,各合金系の焼結温度と組織の関係を比較することで,液相の分布や共晶組織の有無が観察された.また,高温保持した時の流出物が共晶融液であることが分かった.これらのことから従来の予測の通り一時的液相焼結には低融点かつ高共晶点をもつ合金系が有効であることが分かった. 次に,強度特性を比較した結果,汎用マグネシウム合金よりも強度と延性に優れることから,Mg-Sn系が最も液相焼結に適していることが分かった.また,それぞれの添加量を変化させることで,焼結中の液相量が変化し焼結界面に形成される金属間化合物の寸法も変化し,その結果,各種焼結体の強度特性は金属間化合物の平均寸法で全て整理できることが判明した. 以上のことから,研究計画に則して液相焼結の予測の検証とMg-Sn系が最適な理由を明らかにでき,得られた知見を外部へ発表できたため,達成度はおおむね順調に進展していると自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
大まかには研究計画通りだが,主目的の熱処理による金属間化合物の寸法制御は,その化合物が熱的に安定なことから,微細化あるいは固溶させることが困難な可能性がある.したがって,あらかじめ合金元素を添加した溶湯から粉末を製造するアトマイズ法によって微細化を図り,そのアトマイズ粉の焼結および強度特性の評価も検討に加える予定である. さらに,固溶化が成功したとしても,マグネシウムの結晶粒の粗大化による強度低下も懸念されるため,平均結晶粒径の依存性についても合わせて検討し,強度試験後の破面観察結果も考慮した上で,総合的な評価から,高強度,高延性化をもたらす焼結挙動の解明について取り組む予定である.
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Causes of Carryover |
見積の誤差等による差額.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として執行予定.
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