2014 Fiscal Year Research-status Report
溶融塩電解によるニッケル基超合金の二珪化モリブデンコーティング
Project/Area Number |
26820332
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹田 修 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60447141)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Ni基超合金 / 耐酸化性 / コーティング / 溶融塩電解 / 二珪化モリブデン / 表面処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
発電効率の向上やCO2の排出量削減を目指して、ガスタービン材料の次世代ニッケル(Ni)基超合金の開発が精力的に進められている。しかし、高温強度の向上と引き換えに耐酸化性が低下する問題がある。そこで、本研究では、高温でも機械的・化学的に安定な耐酸化性被膜で超合金を被覆することによって、耐酸化性を飛躍的に向上させることを目標とした。具体的には、溶融塩電解による二珪化モリブデン(MoSi2)被膜の形成を検討した。特に、溶融塩中でのイオンの輸送速度と電極反応の速度、合金中の元素の拡散速度を見積もることによって、機械的・化学的に安定で緻密な厚膜を形成するのに適した電解条件を明らかにすることを目標とした。 平成26年度は、まず、電気化学測定から珪酸イオンの輸送速度、電極反応の速度を見積もった。その結果、電極上での還元反応が速やかに起こり、珪酸イオンの輸送、電極反応は、表面処理に必要な電流密度(10~50 mA cm-2)の水準で十分速いことがわかった。 また、定電流電解によって合金元素の拡散速度を見積った。その結果、700℃、800℃では、100 micronを越えるMoSi2が生成することから、形成されたMoSi2中のSiの拡散速度は十分に速いことがわかった。一方で、950℃ではMoSi2の膜厚は20 micron程度となり、形成が抑制された。その原因は明らかにならなかったが、MoSi2の形成には電解温度を上げすぎないことが重要であることがわかった。 イオンの輸送が遅いことも懸念されたが、一連の検討で、電解浴の撹拌等は特に必要がないことがわかった。また、130 micron程度までは膜厚が増加するため、モリブデンとシリコンの共析も、現段階では必要がないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、まず、電気化学測定から珪酸イオンの輸送速度、電極反応の速度を見積もった。具体的には、弗化物溶融塩(LiF-KF共晶塩)中に少量のK2SiF6を溶解させ、Mo電極を用いて、電気化学測定(サイクリックボルタンメトリ:CV)によって、珪酸イオンの電位-電流応答を観測した。その結果、K2SiF6を1 mol%程度溶解させただけでも、50 mVs-1程度の掃引速度で還元電流が鋭く立ち上がった。つまり、電極上での還元反応が速やかに起こることから、珪酸イオンの輸送、電極反応は、表面処理に必要な電流密度の水準(10~50 mA cm-2)で十分速いことがわかった。 また、定電流電解によって合金元素の拡散速度を見積った。カソードはMo、アノードはシリコンとした。温度は700~950℃とし、電流密度と電解時間を変化させて生成する被膜の厚さを計測した。その結果、700℃、800℃では、100 micronを越えるMoSi2が生成することから、形成されたMoSi2中のSiの拡散速度は十分に速いことがわかった。一方で、950℃ではMoSi2の膜厚は20micron程度となり、形成が抑制された。その原因は明らかにならなかったが、MoSi2の形成には電解温度を上げすぎないことが重要であることがわかった。 イオンの輸送が遅いことも懸念されたが、一連の検討で、電解浴の撹拌等は特に必要がないことがわかった。また、130micron程度までは膜厚が増加するため、モリブデンとシリコンの共析も、現段階では必要がないことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成27年度)は、電解諸条件が被膜の機械的・化学的特性に与える影響を検討する。具体的には、溶融塩中のイオン濃度(珪素源、モリブデン源等)や温度、電流密度を変化させて定電流電解を行う。そうして得られた被膜の組織(膜厚、緻密さ、硬度)、基材との密着性を評価する。一連の検討で基材と密着性が高く、厚膜が形成できる条件を確定する。さらに、数水準の膜厚(50~150 micron)の被覆試料を作製し、被覆合金の耐酸化試験を行う。これは、被覆合金を大気下で高温(~1200℃)にさらし、質量変化を測定するものである。さらに、試験後の合金のミクロ組織を観察し、被膜と基材の密着性や空孔の有無について確認する。また元素分布を測定し、高温での拡散挙動を解析する。この耐酸化試験の結果を電解試験にフィードバックし、最適な電解条件を決定する。一連の検討によって、1200℃でも、サイクル試験での剥離による質量減少が5%以下になることを目標とする。
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Research Products
(2 results)