2014 Fiscal Year Research-status Report
SiC溶液成長界面のIn-situ観察と理論予測に基づく超高品質結晶の育成
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26820334
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川西 咲子 東京大学, 生産技術研究所, 研究員 (80726985)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シリコンカーバイド / 溶液成長 / In-situ観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、溶液成長界面における貫通転位欠陥の動的挙動の調査を行った。研究代表者らが独自に確立した可視光透過観察法により、FZ法による溶液成長界面のIn-situ観察を実施した。Fe-Si系溶媒を用いた4H-SiC(0001) Si面上への1500~1600℃での溶液成長界面の観察により、種結晶中に内在する貫通らせん転位を起点とした4H-SiCのスパイラル成長が進行する様子が確認された。一方、成長温度が1500℃以下の場合には、しばしば二次元核生成・成長する様子が確認された。二次元核生成では種結晶と異なるポリタイプの成長が進行しており、高品質化を目指す上で必須の単一ポリタイプ成長への妨げとなる。そこで、成長温度と二次元核生成頻度を系統的に調査したところ、核生成の数密度の対数は過飽和度に対して線形関係を持つことがわかった。過飽和度の比較的大きな1400℃では成長開始時に二次元核生成が多発しポリタイプの制御が困難であったのに対し、1600℃以上では成長モードを種結晶中の貫通らせん転位を起点としたスパイラル成長に制御可能であり、4H-SiCを継承した成長が可能であることがわかった。 以上より、成長温度と過飽和度を正確に制御することで、本研究での観察対象である種結晶中の貫通らせん転位を継承したスパイラル成長を促すよう、成長モードを制御できることが分かり、その条件を概ね決定することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
溶液成長界面のIn-situ観察に関しては、種結晶中の貫通らせん転位を起点とするスパイラル成長を促すために適切な条件を見出しており、転位の挙動の観察を進めている。しかし当初の予定であった、貫通らせん転位の構造転換に必要な因子の決定には至らなかった。そのため、並行して行う予定であったTEMを用いたin-situ観察箇所の転位周辺の原子構造解析については未実施である。以上を鑑みて、進捗状況が遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
In-situ観察とTEM観察による成長結晶の構造解析に加え、本研究では第一原理計算によりSiC結晶中転位、界面の安定性と原子構造の解明に挑戦する。必要な計算機類は整っており、予備的な計算を開始しており、今後SiC結晶中の転位近傍での不純物成分の安定性の解明を目指す。In-situ観察に関しては、継続して貫通転位の挙動を調査する。溶媒成分の影響を調査するため、これまでに実施したFe-Si系に加え、Si-Cr系およびSi-Ti系での挙動を観察する。また、界面の平滑性に及ぼす微量成分の寄与を検討するため、各系にAlを最大5mol%添加した溶媒を用いて成長界面の挙動を観察する。また、転位近傍の構造解析については、作製試料を順次TEM観察に供していく予定である。
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Causes of Carryover |
進捗の遅れにより論文投稿の準備段階であるため、投稿を見据えた費用は次年度に持ち越した。また、次年度に追加予定の物品が新たに複数見込まれたため、当初の予定を変更し、消耗品等での出費を抑えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第一原理計算およびそのデータ解析にあたり、パソコン作業の増加は不可避であるため、PCおよび周辺機器を整備する予定である。また、in-situ観察用の装置の新規作製と、雰囲気調整システムの導入、種結晶等の消耗品等に使用するほか、TEM装置の使用料等にも充当する予定である。
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