2014 Fiscal Year Research-status Report
耐ファウリング性能の理論計算と水和構造の動態解析による水処理膜の分子設計
Project/Area Number |
26820338
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
南雲 亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20552003)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 水処理膜 / 分子動力学法 / ファウリング特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、分子動力学(MD)シミュレーションを駆使することで、種々のポリマー鎖近傍における水分子のミクロ挙動を解析した。具体的には、①各種ポリマー素材の簡略化モデリング、②各種ポリマー素材および水分子の相互作用ポテンシャル決定と水和モデルの構築、③MD計算による水和構造の動態解析、の各項目を実施した。以下に、これらの項目によって得られた研究実績の概要を示す。 項目①では、MD計算を実施するための前段階として、汎用素材であるポリビニルアルコールやポリエチレンテレフタレート、温度応答性ゲルとして有名なポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、水処理膜の素材として代表的な芳香族ポリアミドなど、種々のポリマー素材を対象に、分子構造の簡略化モデリングを実施した。 項目②では、各種ポリマー素材と、その周囲を取り囲む水分子に適用すべき相互作用ポテンシャルを決定した上で、水和構造の計算モデルを構築した。 項目③では、項目②で構築した計算モデルを対象とするMD計算を実行し、得られたトラジェクトリデータを解析することで、ポリマー鎖近傍における水分子のミクロ挙動を解析した。その結果、ポリマー鎖の分子構造やポリマー構成原子の種類により、水和構造が明確に異なることが判明した。特にポリマー鎖を構成している酸素原子の近傍では、多くの場合、水分子との水素結合を介して顕著な水和構造ネットワークを形成する動態を計測した。 こうした特徴的な水和構造が、水処理膜の耐ファウリング性能を支配する要因となっている可能性も考えられる。そこで今後は、水分子の動的な挙動変化にも着目して、さらに詳細な解析を実施する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
素材近傍における水分子のミクロ挙動を解析することで、ポリマー鎖の分子構造やポリマー構成原子の種類により、周囲の水分子によって形成される水和構造の動態が明確に異なることが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、温度や圧力などの計算条件を様々に変えながら、素材近傍における水和構造の動態変化と膜ファウリング挙動の相関性を検証する予定である。
|
Causes of Carryover |
平成26年度は、各種ポリマー素材の簡略化モデリングや相互作用ポテンシャルの決定、水和構造の計算モデルの構築に注力した。これらの作業に対し、当初の想定をやや上回るエフォートを投入した結果、水分子のミクロ挙動を計算するためのワークステーションの購入の他に大きな支出がなく、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、前年度から進めている各種ポリマー素材の水和挙動を詳細に解析するための計算機サーバシステムを選定し、購入することを計画している。また、本研究の実施によって得られる計算データは膨大な量であるため、大規模データ保存用のハードディスクを導入する予定である。 研究成果を公表するため、化学工学会や日本膜学会などの国内学会における発表のほか、国際会議における研究発表を計画している。別途、学術雑誌での研究成果の発表に際して、英文校正料、論文投稿料および印刷費を計上する。
|
Research Products
(4 results)