2014 Fiscal Year Research-status Report
構造制御された高密度欠陥グラフェンの合成とその可視化
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26820348
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 泰弘 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90546780)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Graphene / Defects / Pentagon / Heptagon / Nitrogen / XPS / TEM / Raman |
Outline of Annual Research Achievements |
黒鉛を一層にしたグラフェンは高比表面積、高電気伝導率などの特性から電極、触媒担体、分子篩膜への応用が期待されている。これらの特性を劇的に向上させるためには、構造制御された欠陥の高密度導入が不可欠となる。5-7 員環、空孔欠陥、官能基などの欠陥を高密度で導入する最善の方法は、原料本来の分子構造を崩すことなく脱水素反応のみを進行させるグラフェン合成方法である。本研究では、5-7 員環を含むアズレンや含窒素芳香族化合物を原料とし、脱水素反応以外の副反応を伴うことなく原料の分子構造をそのままグラフェンに組み込むことを目的とした。5-7員環を含むグラフェンに関しては、現在のところ低温合成(773 K以下)を行うことにより、透過型電子顕微鏡の結果から6員環由来ではないグラフェンの存在が確認できた。このグラフェンが6員環由来でないことは、ラマン分光分析、X線光電子分光分析のC1sスペクトルの結果より明らかとなった。含窒素グラフェンに関しては、構造の異なる芳香化合物を原料として用い、5-7員環のグラフェンと同様に、低温(573 K以下)で加熱し、特定の原料を用いることにより、その原料の骨格を壊すことなく脱水素反応を主に進行させグラフェンを合成可能であることが明らかとなってきた。今後は、これらのグラフェン構造を、球面収差補正付電子顕微鏡やラマン分光分析、X線光電子分光分析、量子化学計算により詳細に解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにアズレンや含窒素芳香族化合物を原料として、含5-7 員環や含窒素グラフェンの合成を行ってきた。1273 K ではアズレンがナフタレンへと変化するものの、973 K 以下では脱水素以外の構造変化を起こさず、さらに温度を下げた673 K でもグラフェン合成が行えることを確認した。このアズレン由来のグラフェンを透過型電子顕微鏡で観察したところ、2種類の領域が1枚のグラフェン中に確認できた。1種類目の領域にはアモルファスに近い見た目で、2種類目はアモルファスの部分が少ないように見えた。このTEM像をフーリエ変換したところ、アモルファス部分が多い領域では、6員環で構成される規則的な構造のグラフェンが存在せずに、アモルファス部分が少ない領域では、規則的な一般的なグラフェンが存在することがわかった。上記のアズレンに加え、数多くの含窒素芳香族化合物の原料を用いたグラフェン合成を行った。電子線回折像よりこれらは単層であることを確認した。これらグラフェンをXPSで解析したところ、芳香族化合物の原料の種類により、その原料の構造を保持しているものと保持せずに熱分解を起こす違いが見られた。含窒素グラフェンについては、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンを原料としてグラフェンを合成したところ、ピリジンでは、N1s XPSスペクトルの結果から多くのピリジン様官能基が残存していることがわかった。これに対して、環内に2つ以上の窒素を含有したピリダジン、ピリミジン、ピラジンのような原料の場合、その構造は573 K程度から大きく変化し4級窒素などの他の官能基を生成した。
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Strategy for Future Research Activity |
アズレン由来の含5,7員環グラフェンについては、低温合成でアモルファス状のグラフェンを生成することが透過型電子顕微鏡の観察結果やそのTEM像をフーリエ変換したFFT像の解析により確認できており、このアモルファス状のグラフェンに5,7員環が実際に含まれているかどうかを現在、球面収差補正付透過型電子顕微鏡により観察し、その構造解析を行っている。観察結果が得られ次第、その得られた構造を用いて、量子化学計算によりRamanやX線光電子分光分析のスペクトルのシミュレーションを行い実際のスペクトルとの違いを考察する。含窒素芳香族化合物を原料にしたグラフェンについては、芳香族化合物で環の数が3つで窒素を2原子含むPhenazine、1,10-、1,7-、4,7-、5,6-phenanthrolinenなどを銅触媒の非存在下で加熱したところ、4,7-、1,7-phenanthrolineが973Kで加熱して炭素化しても構造が保たれていたことがXPS N1sのスペクトルの結果より明らかとなった。これらの構造が保持可能な原料を用いて今後銅触媒の存在下で加熱を行い、構造制御されたグラフェンを合成する。合成温度は、銅触媒を用いずに加熱を行った973 Kよりも低い温度(573~773 K)で加熱を行い、脱水素反応以外の副反応を進行させないように合成を行う。合成したグラフェンについては、Raman分光分析やX線光電子分光分析で分析し、透過型電子顕微鏡で観察する。また、量子化学計算を用いて、Raman分光分析とX線光電子分光分析の結果をシミュレーションし、実測値との比較を行う。このX線光電子分光分析での結果、C-N結合に影響していないことが証明可能となれば、このサンプルについても球面収差補正付透過型電子顕微鏡にて原子レベルでの構造解析を行う。
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Research Products
(2 results)