2014 Fiscal Year Research-status Report
異核金属構造により電子状態を制御したポリオキソメタレートの合成と触媒特性
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26820349
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菊川 雄司 金沢大学, 物質化学系, 助教 (10637474)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / 構造制御 / 核数制御 / タングステン / バナジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリオキソメタレートは、バナジウム、タングステン、モリブデンなどのオキソ酸が自己集合的に縮合したアニオン性金属酸化物クラスターである。ポリオキソメタレートは分子性が高く、無機配位子として、多核金属構造を構築することが可能である。本研究では、酸化還元不活性金属と遷移金属を組み合わせた異核金属構造をポリオキソメタレート内に構築することを目的としている。 本年度は、多核金属構造の核数制御、構造制御、ポリオキソメタレート配位子の構造制御について研究を進めてきた。本研究では、異核構造を構築すると共に、幾何構造の制御も検討する。四核コバルト構造を有するポリオキソメタレートが、平面四核構造と、立方体四核構造との構造変換が可能であることを見出した。これらの反応は平衡であり、前者が紫色、後者がオレンジ色と異なることから、室温付近で応答するサーモクロミズム材料となることが明らかとなった。 これまで、ケイ素とタングステンからなるポリオキソメタレートを用いてきたが、中心金属をリンに変えたポリオキソメタレート配位子を新たに合成し、チタンの四核構造を構築することが可能であることを見出した。さらに、タングステンではなく、バナジウムを基盤としたポリオキソメタレート配位子についても検討した。二種類のフッ素を含有したポリオメタレートの生成過程、構造の関係性について明らかにした。また、ポリオキソメタレート配位子を用いて、マンガンの二核構造、三核構造と構造変換が可能であることを見出した。バナジウムを基盤としたポリオキソメタレート配位子を用いることで、より柔軟な金属核構造を構築可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では、異核構造の合成、多核構造の幾何構造制御を計画していた。幾何構造制御に関して、四核コバルト構造の幾何構造が制御可能であることを見出した。異核構造については、二種類の金属をタングステンを基盤としたポリオキソメタレートに導入することが可能であったが、核数を増やすことが困難であった。そこで、配位子となるポリオキソメタレートに関して知見を広げた。中心金属をケイ素からリンに変えた化合物でチタンの多核構造が構築可能であることを見出した。さらに、バナジウムを基盤としたポリオキソメタレートを用いることで、より柔軟に導入する金属構造を制御可能であることを見出した。バナジウムを基盤としたポリオキソメタレートは発展途上であり、基礎的な化学を解明すると共に、当初の計画より可能性のあるバナジウムを基盤としたポリオキソメタレート配位子の可能性を発見でき、次年度に活かすことができる。 以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の段階では、タングステンを基盤としたポリオキソメタレートを配位子として核数、幾何構造、金属の組み合わせを制御することを考えており、取り組んできた。取り組む中で、ポリオキソメタレートの基盤となる金属をタングステンからバナジウムに変更することで、より柔軟に核数制御が可能であることが明らかとなった。今後は、バナジウムを基盤としたポリオキソメタレート配位子を用いて、マンガンとカルシウムとの組み合わせをはじめとする種々の異核金属構造の合成を行い、得られた化合物の同定、電気化学測定、触媒反応などによって、電子状態を明らかにしていく。 これらの得られた結果を取りまとめ、学会誌への投稿や、学会発表を行う。
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Research Products
(9 results)