2014 Fiscal Year Research-status Report
三次元培養系を用いたナノ粒子の固形がん浸透性評価と粒子構造の最適化
Project/Area Number |
26820356
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 誠一 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40723284)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 固形がん浸透性 / スフェロイド / ヒアルロン酸 / ナノゲル / シリコン / 量子フドット / ドラックデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、胃がん細胞株からスフェロイドを作製する手法を確立し、ナノ粒子の組織浸透挙動の評価系を構築した。 まず、研究協力者である東京大学 酒井康行教授が開発した酸素透過性マイクロウェルを使用し、胃がん細胞株MKN74のスフェロイドの作製を行った。その結果、球状のスフェロイドを作製することに成功し、播種細胞数を変えることで、そのサイズを50-200 um程度の範囲で任意に制御できることが確認された。さらに、繊維芽細胞株NIH3T3との共培養により、複数の細胞種で構成されるスフェロイドを作製できることも示された。 続いて、作製されたスフェロイドをモデル腫瘍組織として用い、これに蛍光標識されたナノ粒子を投与して、粒子の浸透挙動を共焦点顕微鏡で観察する実験系を構築した。モデル物質として蛍光標識されたヒアルロン酸(HA)を使用し、その浸透挙動を検討した結果、時間の経過に応じてHAが徐々にスフェロイド中へと浸透していく様子を観察することに成功した。さらに、このHAをナノ粒子化し、その浸透挙動を比較したところ、直鎖のHAに比べてスフェロイド中への浸透深さが顕著に向上することが分かった。これは、HAをナノ粒子化することによって流体力学的サイズが小さくなり、これによって細胞間のECM中を拡散しやすくなったからだと推測される。このの結果は、材料設計によってナノ粒子のサイズや表面化学種などを変えることで、腫瘍組織中での浸透性が大きく変化する可能性を示唆している。 以上の検討に加え、今後モデル粒子として使用予定のシリコン量子ドット(Si-QD)についても、細胞株によるin vitro試験によって、蛍光イメージングと薬物送達の二つの機能を両立することを実証した。今後このSi-QDとHAの複合体粒子をモデルとして用い、その材料設計とスフェロイド中での浸透性との相関を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、胃がん細胞スフェロイドを用いた、ナノ粒子の組織浸透挙動の評価系の構築に成功した。これで、本課題を遂行するための土台が整ったと言える。今後、構築した評価系を用いて検討を進めていくことで、本課題の目的であるナノ粒子の組織浸透過程のメカニズム解明と、浸透性向上のための材料設計指針の獲得へとつながっていくと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
胃がん細胞と繊維芽細胞との共培養比や酸素供給量などの条件を変化させて、ECMの産生量や酸素欠乏による中心の壊死度合いなどが異なるスフェロイドを作製する。これらにサイズや表面状態の異なるモデルナノ粒子を投与し、浸透挙動を比較する。これにより、ナノ粒子の浸透挙動に対する腫瘍組織の生理学的性質及びナノ粒子の材料設計の影響を明らかにする。さらに、拡散反応方程式をベースとした数理モデルを構築し、それを用いて実験結果を解析することで、ナノ粒子の腫瘍組織中の浸透メカニズムを定量的に理解することを目指す。
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