2014 Fiscal Year Research-status Report
次世代宇宙推進機のための大電流ホローカソードの研究
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26820377
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
窪田 健一 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 航空本部, 研究員 (10723364)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Hybrid-PICコード開発 / ヒーター加熱試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホローカソード内外のプラズマ諸量を見積もるための2次元軸対称数値解析コードを開発した。解析モデルとしては、希薄効果を自然な形で取り入れつつも計算コストを抑えるために、中性粒子・イオンは粒子、電子は流体として扱うHybrid-PICモデルを採用した。各種衝突(弾性衝突、電荷交換衝突)はDSMC(Direct Simulation Monte Carlo)モデルで実装した。計算効率の向上のために、計算コードはMPIにより並列化されており、各プロセスが担う領域を動的に変動させることで負荷の均一化を図った。 ガス流量10sccm、放電電流30Aの条件下で解析を行い、結果をJPL(ジェット推進研究所)が計測したカソード内部のプラズマ諸量と比較した結果、解析結果が定性的、定量的に妥当な範囲にあることが確認された。 なお、流体モデルとの接続も検討していたが、Hybrid-PICにより現実的な時間内に妥当な結果が得られたこと、また、流体モデルでは電荷交換衝突を正確に考慮するのは困難であると予見されたことから、流体コードの開発は実施しなかった。 計算コードの開発と並行して実験用ホローカソードの設計・製作も実施した。設計には商用熱解析ソフトを利用し、インサートの加熱に必要な電力が可能な限り抑えられるような設計とした。設計したカソードを製作し、所定の温度までインサートを加熱できるかどうか調べるためにヒーター加熱試験を実施した。その結果、使用予定のインサート材であるLaB6が放電可能であると予想される1500℃まで加熱しても、熱的・物理的な問題がないことが確認された。さらに、放電電流が100Aのときのインサート温度と予想される1700℃まで加熱したが、目立った問題がないことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元軸対称Hybrid-PICコードの開発は、過去に開発した3次元Hybrid-PICによるノウハウを生かすことである程度順調に行うことができた。高い計算負荷が懸念されたが、壁面における粒子の融合、希薄域での粒子分割、動的領域分割による並列化などの負荷低減措置を施した結果、現実的な時間内に結果を得ることができた(Intel Xeon 2.3GHz 12コアで2日程度)。 実験装置の熱設計には所属部署所有の熱解析ソフトを活用したで円滑に作業を進めることができた。想定していたよりもカソード製作費が大幅に高くなったが、予算を前倒しで使用したことで年度内に製作することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
数値解析においては、Hybrid-PICモデルに含まれる定数が結果にあたえる感度を解析し、現状のモデルに関する知見を深める。また、得られた結果から見積もられる壁面熱流束を熱解析に反映させ、Hybrid-PICと熱解析の弱連成解析を実施する。プルーム中のイオンエネルギー分布関数を評価し、先行研究で指摘されている高エネルギーイオンの出現が再現できるか調査する。なお、現時点で現実的な時間内に妥当な結果が得られていることから、流体モデルの開発は当面見合わせ、導入は状況に応じて適宜判断する。
実験においては、電流電圧特性を取得する。放電時のカソードチューブ温度計測も実施し、測定データと熱解析結果を併用することでインサート表面温度を見積もり、それを解析に反映させることで、解析精度の向上を目指す。プルームのプラズマ計測も実施し、解析結果の妥当性の検証に生かす。
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Causes of Carryover |
ホローカソード本体の詳細設計段階における設計変更に伴い、費用の変動が生じたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験装置本体の交換用部品(オリフィス、電子放出材等)の製作、放電実験の実施に必要な周辺機器の購入,学会発表のための旅費に使用する。
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Research Products
(3 results)