2014 Fiscal Year Research-status Report
ジャイロ運動論的シミュレーションに基づく3次元プラズマ乱流輸送の定量的予測
Project/Area Number |
26820398
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
沼波 政倫 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40397203)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / ジャイロ運動論的シミュレーション / 乱流輸送 / 大型ヘリカル装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大型ヘリカル装置(LHD)に代表される非軸対称装置や、配位の3次元性の重要性が増しているトカマク装置などの3次元磁場閉じ込めプラズマにおける熱・粒子の異常輸送現象を定量的に理解することを主な目的とする。平成26年度では、上述の目的を達成するために、シミュレーションコードの拡張や多数の乱流解析を実施し、下記のような成果を得た。 (1) 複数粒子種間の衝突オペレータの実装:これまでの我々の数値解析で用いてきたモデル衝突オペレータでなく、複数のイオン種や電子を含む衝突オペレータをGKV/GKV-Xコードに新たに実装した。これは、運動量やエネルギー、粒子数の各保存則を満たす形式で構築されており、随伴関係も満たすものである。このオペレータを用いることにより、正確な衝突効果の導入が必要となる補足電子モード(TEM)乱流の解析など、より現実的な乱流輸送解析に威力を発揮する。 (2) イオン熱輸送の温度勾配依存性の解明:乱流輸送レベルに対するプラズマ周辺部での数値解析と実験結果との差異が近年盛んに議論されており、その原因として、温度分布の実験計測の誤差範囲内における鋭敏な温度勾配依存性が挙げられている。そこで26年度では、LHDプラズマに対して多数のシミュレーションを実施し、温度勾配依存性を定量的に評価した。その結果、上述の実験と数値計算の差異は、これまで実験と一致していたとされていた炉心部分でむしろ大きな不定性を導く結果になることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最初の課題であった精密な衝突モデルのジャイロ運動論的シミュレーションコードGKVへの導入が完了し、平成27年度以降の研究進展への基礎が完成した上、近年、当該分野で活発に議論されている乱流輸送シミュレーションのショートフォール問題に対する、プラズマプロファイル依存性について新たな知見が得られた。 これらの成果を受けて、今後、様々な条件下でのシミュレーション解析を進める必要もあるため、上記の達成度とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までの研究成果を受けて、平成27年度では下記の点について研究を推進する。 (1) 精密な衝突効果を含めた補足電子モード(TEM)の解析: 平成26年度に開発完了した高精度の衝突オペレータを用いた運動論的電子を含むTEM不安定性解析と乱流シミュレーションをLHD配位で実行し、3次元配位におけるより定量的な乱流輸送解析を実施する。これらの微視的不安定性による乱流は、帯状流の生成の影響も強く受けるため、衝突効果と帯状流生成における定量的な相関も詳しく調べる。 (2) 輸送のプラズマ・プロファイル依存性の解析: TEM乱流に極めて重要な密度勾配について、LHD実験結果から許される範囲における勾配依存性を詳しく調べ、輸送フラックスを再現するプラズマ・プロファイルの定量予測を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外出張に関し、想定していた旅費よりも節約することができた上、物品費として予定していたデータ保存用ディスクの型式が更新され、次年度での購入に予定を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ保存用のディスク購入に充てるほか、10月にドイツで予定されている国際会議に出席する旅費が通常期よりも高額になる可能性があるため、その不足分に充てる予定である。
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