2014 Fiscal Year Research-status Report
ベリリウム金属間化合物による高性能化水素同位体吸蔵合金の創製技術に関する研究
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26820402
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
金 宰煥 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 六ヶ所核融合研究所, 研究員 (80613611)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水素吸蔵合金 / プラズマ焼結法 / 水素化物 / 第一原理計算 / 固溶エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
新たな手法であるプラズマ焼結法を用いて、ベリリウム金属化合物であるBe2Ti合成試験を実施した。当初、BeとTiの原料粉末を自動乳鉢で混合した混合粉末を原料として用いてプラズマ焼結によって合成を試みたが、再現性良く他組成を含まないBe2Ti組成のみの単相試料を得ることが困難であった。そのため、種々の合成条件を試行した結果、最初に混合粉末を熱処理することによって合金化し、その粉末を原料としてプラズマ焼結することによって、目標であるBe2Ti単相試料の試作に成功した。また、Be2Tiの合成法の検討と並行し、第一原理計算に基づいた各サイトにおける水素原子の固溶エネルギーを求め、最大水素吸蔵量の計算を行った結果、約5.4%の水素が吸蔵可能であることを明らかにした。 Be2Ti試作試料の水素吸蔵特性を評価するため、各温度におけるPCT(圧力-組成-温度)特性評価を行った結果、水素圧力13MPaで約0.5%という結果を得た。本結果は、測定前の初期活性化処理が十分でなかったか、材料の持つ特性上、水素解離平衡圧が高い可能性がある。この課題の対策として、次年度開始する予定であった触媒添加試験を先行して実施した。これは、材料活性化を促進するため、触媒を添加する手法であり、今年度は試行的に触媒としてNiを添加したBe2Ti0.9Ni0.1 とBe2Ti0.7Ni0.3を同様な手法で合成し、PCT特性を評価した。その結果、Niを添加した場合、Be2Ti単相試料よりも水素吸蔵量が低下し、合成したBe2Ti0.9Ni0.1 とBe2Ti0.7Ni0.3では、Niの触媒効果は得られないことが明らかになった。その原因究明の結果、Niの場合、化合物を形成せずに吸熱型金属(水素吸蔵しない)であるNi単独で存在してしまったことから、その期待した触媒効果が得られないことを明らかにした。この研究で国際会議にて発表1件、国内学会にて発表2件、優秀ポスター賞1件の成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度研究計画であるBe2Ti単相試料の合成基盤技術は順調に進展している。また、第一原理計算に基づく数値解析も実施しており、次年度触媒添加効果を進展させる上でも組成選定の目処が得られた。また、初期活性化処理の改良、さらには、Be2Tiの水素化物を用いた水素吸蔵能力評価を次年度計画に組み込むことなど、改良・評価すべき点の洗い出しも行った。
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Strategy for Future Research Activity |
原料粉末の合金化プロセスとプラズマ焼結法を組み合わせた新たな合成法を用いてBe2Ti単相試料の合成に成功した。今年度は、水素吸蔵性の理論値に近づくため、初期活性化処理の改良を行うとともに、Be2Tiの水素吸蔵能力評価のためのBe2Tiの水素化物(Be2TiHx)の直接合成法を検討の上、水素吸蔵量評価を行う。さらに、昨年度実施したNiのみならず、計算結果に基づき選定した新たな触媒材について、化合物化できる新たな添加法の探索を行う。新たな添加元素としては各元素における水素固溶エネルギーを求めた上で水素が安定に存在可能な発熱型金属(Sc、V、Mn等)を添加し、その水素吸蔵特性を評価する。添加法としては混合粉末に高いエネルギーを与え、機械的合金化を可能にする遊星ボールミル法を用いて添加・合成(メカニカルアロイング)を試みる。また、水素化物の直接合成法としては同様に遊星ボールミル法を用い、水素雰囲気下でのBe粉末と各種水素化物粉末(MHx、M:Ti, Zr, Mg, Na, K, Li等の水素化物)を最適化した条件でボールミリングして、Be2MHx水素化物の直接合成を行う。それらの水素吸蔵・放出特性を評価し、最大水素吸蔵量及び吸・放出時の熱量を求め、原子密度、原子半径及び電気陰性度等との相関を調査する。また第一原理等の数値解析を用い、ベリライド中の水素の位置を予測し、水素吸蔵特性との相関を調査し、水素吸蔵・放出メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
原料粉末(Be)の納入が遅れる恐れがあったため、既に所有していた原料粉末(Be)を使用し、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
触媒材としての添加元素粉末(Sc、V、Mn)の購入及び各種水素化物粉末(Ti, Zr, Mg, Na, K, Li等の水素化物)の購入に使用する。
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