2014 Fiscal Year Research-status Report
レーザー結晶を利用した近赤外発光Nd3+添加ペロブスカイト型シンチレータの開発
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26820408
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤本 裕 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60639582)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シンチレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Nd3+イオンの禁制遷移を利用した近赤外発光型ペロブスカイト結晶シンチレータの開発を目的とし、サンプルの合成から、光学特性及び放射線応答特性評価を統合的に行うことで、広線量率範囲において、近赤外発光による線量評価が可能な材料の開発を目指す。今年度においては、フローティングゾーン法により、Nd3+イオンを微量添加したYAlO3、(Y, Gd)AlO3、GdAlO3、(Lu, Y)AlO3、LuAlO3結晶を作製し、その化学組成及び構造の解析を行った。開発当初、不純物相が生成され多結晶化が問題となったが、合成条件(育成速度、温度、雰囲気など)の最適化により、クラックのない単相のサンプルを得ることに成功した。また、X線回折評価により、Nd添加濃度の増大に伴い、格子定数の変化していく様子も確認されており、SEM-EDSによる組成分析の結果も考慮すると、添加されたNdが母結晶内に固溶されていることが伺える。加えて、得られたサンプルについて光学特性評価を行った。透過率測定より、添加されたNd3+に伴う4f-4f禁制遷移の吸収帯が可視域に確認された。これらの吸収強度は、Ndの添加濃度に比例して大きくなっており、上記評価結果とも一致している。Nd3+イオンの基礎的な発光特性を評価するため、フォトルミネッセンス測定を行ったところ、Nd3+に伴う4f-4f禁制遷移発光が近赤外域にて観測された。特に、Nd:YAlO3やNd:(Lu, Y)AlO3において、近赤外の蛍光強度が大きかった。当該測定は、厳密にはシンチレーションと過程が異なるが、最終的な発光中心の量子収率のシンチレーション効率への寄与は大きく、材料探索の重要な指標となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、Nd3+イオンの禁制遷移を利用した近赤外発光型ペロブスカイト結晶シンチレータを開発を目的とし、サンプルの合成から、光学特性 (透過率、反射率、屈折率、蛍光波長、蛍光寿命、量子収率)及び放射線応答特性評価(シンチレーション発光波長、減衰時定数、発光量、温度特性、エネルギー応答の線形性、熱ルミネッセンス:TSL、光刺激ルミネッセンス:OSL)を統合的に行うことで、広線量率範囲において、近赤外発光による線量評価が可能な材料の開発を目指す。現在までに、サンプルの合成条件を最適化により、Nd:YAlO3、Nd:(Y, Gd)AlO3、Nd:GdAlO3、Nd:(Lu, Y)AlO3、Nd:LuAlO3の各種結晶を作製した。作製したサンプルにおいては、化学組成分析、X線回折評価及び透過率測定の結果から、添加されたNdイオンが結晶内に固溶していることが確認された。また、フォトルミネッセンス測定により、各種結晶の近赤外蛍光も確認されており、近赤外発光材料として機能していることが示唆された。特に、Nd:YAlO3及びNd:(Lu, Y)AlO3結晶の2つは、光励起時の近赤外蛍光強度を大きく、シンチレーション材料としても期待できるとも思われる。当該結果は、研究計画で想定したスケジュールにほぼ一致しており、極めて順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究により、Nd:YAlO3、Nd:(Y, Gd)AlO3、Nd:GdAlO3、Nd:(Lu, Y)AlO3、Nd:LuAlO3の各種結晶を作製し、光学特性は評価した。今後の方針としては、X線励起時の近赤外シンチレーション特性を評価することで、近赤外シンチレータとしての性能評価を行う。特に、シンチレーションのX線照射量依存性や温度依存性を評価し、広線量率範囲においても近赤外シンチレータとして十分機能するか否かを判断する。、また、熱蛍光及び輝尽蛍光特性を評価することで、シンチレーション効率を阻害する電子及び正孔トラップ準位の濃度を評価する。当該トラップ準位の評価は、シンチレーション過程の理解を深めるとともに、近赤外シンチレータの設計指針へも繋がる。最終的に、近赤外発光波長に対して、80%以上の透過率を示し、近赤外受光器と組み合わせて、10-105 mSv/hrの線量率範囲で計測が可能なシンチレータ材料の開発を行う。
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