2014 Fiscal Year Research-status Report
新規配位高分子による放射性セシウム有効利用のための分離・回収法開発
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26820409
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
南川 卓也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 原子力科学研究所 バックエンド技術部, 研究員 (30370448)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セシウム / イオン選択性 / 配位高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで溶液中での利用がほぼ行われていない配位高分子(metal-organic framework:MOF)のサイズ制御可能な高秩序細孔を利用して、細孔のサイズを微調整することにより、セシウムを選択的に捕集できる材料の開発を行うとともに、捕集反応について調査し、捕集性能を向上させる試験を行った。 合成したMOFである (NH4)[Ln(C2O4)2(H2O)] ( Ln = Tb, Yb)のセシウム取り込み量を調べた結果、純水ではセシウムを検出下限以下まで取り込めることを明らかにした。このときMOF 中のNH4+ の中でCs+ と交換するものの割合(反応率)は、粉末が小さくなるほど大きくなることを走査型電子顕微鏡等で確認し、結晶表面の大きさが、MOF 内への取り込み量に大きく関与していることを明らかにした。このため、微細粉末化処理で、これまで6%程度であった反応率を、最大17%へ改良した。またこれらは、水中でも通常のMOF より極めて安定であることを粉末X線から明らかにした。 次に、セシウム選択性を調査するため、実際に利用されるゼオライトでは困難な海水中からのセシウム取り込み試験を行った。エネルギー分散型X線分析から、(NH4)[Yb(C2O4)2(H2O)]には、海水中からNa+ が大量に取り込まれることが明らかとなった。しかし、このMOFより細孔の大きな(NH4)[Tb(C2O4)2(H2O)]では、海水中でもMOFにNa+が検出されず、セシウムを取り込んだ構造とほぼ同じ構造を保つことを粉末X線等から明らかにした。 今年度の実験から、このMOFは高い安定性を持つことを明らかにし、同時にセシウムの捕集量を高めることに成功した。また、海水中でのセシウム取り込みから、金属のイオン半径の微妙な変化で細孔サイズを微調整し、吸着するイオンの選択性を高度に調整できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、この研究では平成26年度に1種の金属を利用してMOF の基本的な溶液中での挙動を調べ、平成27年度に中心金属を変化させることでCs+ 選択性の向上を図る計画であり、Eu の発光挙動について調べて、それを手がかりに溶液中での変化を調査する方法も併せて行う予定であった。 今年度の結果はTb とYb の、2種類の金属についてMOFの基本的な挙動を調べ、その性質を改善することに成功したが、発光挙動についての詳細な調査は行っていない。これは、詳細な調査の結果MOFの細孔内に深く入ったNH4+が交換反応しにくいため、発光挙動では構造変化の観測が困難であったためである。しかし、この知見から、反応率を調査して結晶の微細化が必要とわかり、捕集剤内へのセシウム取り込み量を増加させることに成功した。 MOF の構造は主に粉末X線、元素分析、誘導結合プラズマ発光分光での調査となったが、これら新規に合成したMOF の結晶構造を明らかにしたため、粉末X線での構造推定が計画以上に有効であった。また、当初は1種類の金属についてのみ基本性質を調べる予定であったが、細孔の大きなMOF と小さなMOF の2種類について実験を行うことが出来たうえ、更に27年度に予定していたセシウム選択性に関する試験にも基本的な知見を得ることが出来た。 以上のことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の実験において、MOF がこのままでもある程度の安定性を有していることが明らかとなった。そのため平成28年度から予定していた、いくつかの金属について実用試験を平成27年度にも行い、現状の材料での問題点を探る実験を行う。海水中でのセシウム取り込み試験を継続し、中心金属を変えた時のセシウム等イオン選択性についての実験を継続して行う。これらの実験から、廃液などからセシウムを分離回収し、効率良くMOF も再利用する方法を探る実験を継続し行う。
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Causes of Carryover |
MOF の発光挙動を測定する金額を計上していたが、発光挙動は粒子の大きさにより変動することが明らかになったため、初年度は粒子の大きさ制御に関する実験を行い、発光挙動の詳細な調査を行っていない。これらの一部が昨年度使用されなかったことにより、次年度以降使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画の発光挙動による構造変化観測は、MOF の結晶の大きさを更に微細化すれば、測定が簡便となる可能性がある。そこで、来年度以降もMOF 結晶をまず微細化し、その後発光挙動による状態変化観測を試みるとともに、MOF のセシウム取り込み量の向上を計画している。そのため、これらの予算を次年度以降に回している。
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