2015 Fiscal Year Research-status Report
RIトレーサーを用いたバナジウム・レドックスフロー電池の膜透過評価法の提案
Project/Area Number |
26820417
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白崎 謙次 東北大学, 金属材料研究所, 技術専門職員 (70447176)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | VRFB / V-48 / RI用電池セル / 膜透過モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
①RIトレーサーの調製及びRI実験条件(RI濃度、液量)の決定と実施を目指した。東北大学のサイクロトロン・ラジオアイソトープセンターでは陽子線照射により、Ti-48(p,n)V-48を得た。V-48と同時に放射性Sc-46が生成するが、これをイオン交換法によりV-48のみ単離することを検討した。Ti箔を濃硫酸と反応させると硫酸チタンが沈殿する。硫酸チタン(IV)は水に易溶であるため希硫酸ついで過酸化水素を含む希硝酸を加えて溶解しイオン交換樹脂(弱カチオン交換)に通してチタンイオンやスカンジウムイオンとの分離を試みた。分離条件等について継続的な検討が必要だが分離の可能性を確認した。 ②これまで電池研究で用いてきたセルは内部構造が複雑で、RIを用いた実験をするには取扱いが難しいこと、構造の単純さだけでなくγ線測定を行うために必要な遮蔽体の配置、放射線検出器の配置を配慮する必要があることから、既存のセルを元に専用セルの設計、開発を行った。セルの両サイドは構造保持能を有するSUS製とし、電解液と接触する部分には耐酸性を有するPP製とした。液の流通のないより構造が簡単なセルを作成し、次に、改善点を反映した流通セルの設計を行った。当初、集電体としてSUSを使用したが、硫酸溶液による腐食が激しく、白金またはグラッシーカーボンを使用することとした。 ③膜透過モデルについて、初期的なモデルを設計し、既存の方法より算出された文献値を元にモデルの妥当性の評価を行うことを当初目標とした。前年度同様に、シミュレーションのための環境としてMathWorks社のMATLABを選択し、バナジウム電池の充放電曲線のデータ取り込みからグラフ描画までを自動的におこなうスクリプトを作成し、実行した内容を検証した。現在、膜透過モデルのパラメータの選定を行い、モデル骨格の構築を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①RIトレーサーの調製及びRI実験条件(RI濃度、液量)の決定を行うことを目標として掲げた。本年度は東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターにてTi箔のプロトン照射により放射性バナジウムV-48を調製することを実施した。照射後の試料は直ちに実験施設である東北大学金属材料研究所に移動した。Ge半導体検出器を用いて放射性核種同定したところ、V-48以外にSc-46を含んでおり、単体として使用するにはバルクのTi及びSc-46の分離操作が不可欠であるため、この分離法の検討を進めた。分離法について可能性を見出したが、高い分離比を実現するための実験条件の決定や、電気泳動法等の別アプローチについても検討する必要が出てきている。 ②これまで電池研究で用いてきたセルを元に、遮蔽体を含めた専用セルの設計、開発を行うことを目標とし、試験コイン型セルを作成し、結果を反映した流通セルの設計を行い、製作を行った。 ③膜透過モデルについて、初期的なモデルを設計し、モデルの妥当性の評価を行うことを当初目標として掲げた。平成27年度には、先ず膜透過モデルを構築するために、シミュレーションのための環境としてMathWorks社のMATLABを選択しバナジウム電池の充放電曲線のデータ取り込みからグラフ描画までを自動的におこなうスクリプトを作成し、実行した内容を検証した。これまでに幾つかのスクリプトを作成し、環境にある程度順応することができたが、膜透過モデル完成には至らなかった。平成28年度も引き続いてモデルの完成とシミュレーションを行っていく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の結果から、①RIトレーサーの調製及びRI実験条件(RI濃度、液量)の決定のためのV-48とSc-46の核種分離を行う方法について、イオン交換法における諸条件を決定していく計画である。また平成26年度における報告に言及がある通り、測定系において両者が評価できるような体系を構築し、分離せずに実験可能にする方法も考えている(ただし、その場合は不純物を含む溶液となるため電池充放電に及ぼす影響を評価する必要がでてくる)。両面から課題に挑戦していく計画である。電気泳動法等の別アプローチでは、核種分離に関して酸に溶解した状態でV(IV)とSc(III)となり水和イオンの違いを利用した分離が興味深いと考えている。また、溶解液を電解することによりバナジウムの酸化数をII価、もしくはVI価に変える。価数変化により化学的性質が大きく変わることからイオン交換等の分離法における分離効率に明確な違いが生じることを期待している。測定系での核種トレースにはGe半導体検出器を用いた核種分別を行う必要があり、944 keVのγ線がV-48のみ放出するためこのエネルギーのγ線の入射数と、バックグランドのSc-46の影響及び自然放射線の入射数等を適正に評価してやる必要がある。計数時間についてもある程度の時間を要するためリアルタイム測定ではなく、サンプリング測定の方式で行う必要がある。 ③膜透過モデルのMATLABによるシミュレーションによる検証は、現状のスクリプト化作業を継続して進める。また、文献調査をおこない膜モデルとして適当な理論式もしくは経験式を導き出す。本研究は、実験とシミュレーションによる検証の両輪で進めていく計画であり、ソフトの習熟も含めた検証作業を重要視するところである。
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