2015 Fiscal Year Research-status Report
熱音響場における多周波数音の単純化・増幅効果を応用した騒音援用冷凍機の開発
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26820418
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
経田 僚昭 富山高等専門学校, 商船学科, 講師 (50579729)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱音響冷却 / 未利用エネルギーの利用 / 音響増幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、廃熱駆動型の冷凍機として注目される熱音響冷凍機の新しい応用展開として、騒音エネルギーと廃熱の両方を駆動源とする冷凍機の開発を目的とする。騒音はエネルギー密度が低く,発生源や周囲の環境により周波数特性が変化する。研究初年度は廃熱での熱エネルギー供給による音響増幅効果を検証した。引き続き,本年度は音波入力型熱音響冷凍機を対象とした冷却性能の向上と管内の複雑な音響場計測のためのLDVによる流速測定系の構築,ならびにレーザー干渉法を利用した温度計測系の構築を行った。 ダブルループ管形状による熱音響冷凍機の高性能化:本研究で目指す騒音駆動型冷凍機で大きな冷熱を得るには冷却側での性能の向上の検討が不可欠である。そこで,冷却性能向上方法として装置形状の観点からのダブルループ管形状の有効性について検討した。従来型としてシングルループ型,本研究で提案するダブルループ型の実験装置を構築し,スタック両端に形成される冷却温度差の計測を行った。スピーカー駆動電力一定のもとで実験的に冷却温度差の比較を行ったところ,ダブルループ型で得られた2カ所での冷却温度差の和はシングルループ型を超え,システム全体での性能の向上を実験的に示した。 レーザー干渉法による温度計測系の構築:騒音のような複雑な音場が管内に入力された場合には多数の周波数が混在する複雑な場が形成されることは明白である。効果的な装置の設計や音圧の増幅、効果的な冷却を行うためには流速と温度を高応答・非侵襲的に把握する必要がある。前年度に引き続き、計測点を面状に広げた多点同時LDV流速計測システムを構築し,高速場への対応としてアンプの周波数帯域の向上を進め,1 m/s程度の計測限界を10 m/s程度まで引き上げた。また,レーザーの干渉法による温度測定系を構築し,次年度に熱音響場への適用を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に特定周波数音波の増幅効果の検証から,本年度は冷却側での高性能化について検討を進めた。実験的にダブルループ型の形状による冷却性能の向上を示すことができたため今年度の達成度をおおむね順調に進展していると評価した。 本研究は騒音エネルギーを駆動源とする冷却システムの構築を目指すものである。そのエネルギー密度の低さへの対応として初年度は廃熱による音響エネルギーの増幅を意図した特定周波数音波の選択的増幅効果を確認し,望ましい結果を得た。引き続き,本年度は冷却側での高性能化を目指し,音波入力型の熱音響冷凍機を対象に,スピーカーの駆動電力一定のもとでのスタック両端に形成される温度差の観点からの冷却性能の向上に取り組んだ。音波で十分な冷熱を得るためにダブルループ型を提案し,実験的にその有効性を示すことができた。具体的には,枝管とループ管からなる枝管付きループ管型熱音響冷凍機を従来型として,ループ管を追加するダブルループ管形状を提案し,かつ追加したループ管にもスタックを設置することで一つの音源で2カ所の冷却部を有する新しい熱音響冷凍機形状を構築した。スピーカー駆動電力一定のもとで冷却温度差を比較したところ,スタック単体ではシングルループ型の温度差が大きいものの,ダブルループ型における2カ所での冷却温度差を足しあわせた結果はシングル型を上回り,本形状の有効性を実験的に示すに至った。 管内振動場の計測系について昨年度に構築したLDVによる流速計測系からさらに計測限界となる流速を1m/sから10倍程度の10m/sまで引き上げることができた。さらに、熱音響現象による音波の増幅や冷却効果について検討するには管内の流速変動だけでなく温度変動の計測が必要となる。そのために振動場に起因する温度変化の時空間変動を詳細に把握するためのレーザー干渉法による振動流の温度計測手法の確立に取り組んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに複雑な周波数特性でもあっても特定周波数の音を対象とした選択的な音波の増幅効果について実験的に観測された。冷却側についてもダブルループ型の形状を提案し,冷却性能の向上の目的に対し,その有効性を示した。また,ダブルループ管型熱音響冷凍機による冷却性能の向上と計測領域を平面に広げたLDVによる管内作動流体の時空間変動を計測できるシステムの構築ならびに温度計測系について提案した。 今後の方針として,申請書通り実際の騒音を意図した音波の増幅ならびに冷熱の取得について実験的な検討を進める。本研究で開発する騒音援用冷凍機の適用を船舶エンジンルームでの使用を想定する。船舶のエンジンルーム内での騒音は比較的優勢な周波数が低く(数十Hz~数百Hz)、かつ廃熱も同時に発生しているプラントである。実際のプラントに適用させた廃熱と騒音の同時利用を行う。既にその騒音特性は計測済みである。そこで、最終年度である来年度は、(1) 初年度に構築した音波の増幅実験系による増幅効果の向上、(2) 音波入力後の管内の熱音場特性(圧力、流速、温度)の把握、を平行して実施する。最終的に音波増幅部と冷却系を接続した騒音援用冷凍機を開発する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、騒音取得系の見直しを行ったためである。予定では音響振動レコーダーの購入を予定していたが、昨年度に購入したファンクションジェネレーターと連結できるオシロスコープの購入に切り替えたことによる。マイクロフォンにより取得した騒音信号をオシロスコープに取り込むことで周波数解析などレコーダーでの解析が行え、かつ記録したデータをファンクションジェネレータとの接続により連続的に出力できることが可能となった。つまり、船舶など外部で取得した騒音情報を実験室に持ち帰り実験室内で出力することができる。価格が安価に抑えることができ、かつ実験室での騒音を用いた熱音響実験が容易になるため、レコーダーではなくファンクションジェネレータと接続できるオシロスコープの購入に切り替えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
差額分については実験装置資材に充てる予定である。対象とする周波数はオシロスコープでの信号取得と解析により既に決定済みであり、その装置の構成に向けた検討を次年度に進めて行く。そのための資材(ステンレスパイプや熱交換器用銅板、スタック構成用メッシュ)について多岐にわたり購入が可能となった。また、初年度に構築した音波増幅系と今年度検討したダブルループ管による冷却系を組み合わせた騒音援用熱音響冷凍機の構築を目指す。
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Research Products
(5 results)