2016 Fiscal Year Research-status Report
記憶固定と忘却のバランスを制御するメカニズムの解明
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26830003
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
殿城 亜矢子 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (90645425)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 老化 / 報酬記憶 / 罰記憶 / 味覚神経細胞 / 忘却 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習直後の記憶は不安定であるが、固定化のプロセスを経て安定な記憶となるか、あるいは忘却のプロセスを経て消失する。記憶の固定と忘却がバランスをとることで一定の記憶が保たれているが、このバランスは学習の強弱やその種類に依存する。また、このバランスの異常が加齢に伴う記憶低下の原因の一つであると考えられる。本研究計画では、記憶固定と忘却のバランスを制御する普遍的なメカニズムを明らかにすることで、加齢性記憶低下の原因を理解することを目的とする。 ショウジョウバエの嗅覚連合学習では、電気刺激と匂いを連合学習させて形成される罰記憶、砂糖と匂いを連合学習させる報酬記憶が確立されている。これらの記憶について加齢による影響を検討したところ、罰記憶は加齢に伴い顕著に低下する一方で、報酬記憶は老齢個体でも長時間維持されること、栄養を含まない砂糖との報酬記憶は老齢個体で形成されないことが明らかとなった。 研究の過程で、味覚に対する加齢の影響を検討したところ、ハエ老齢個体では若齢個体に比べて甘味に対する感受性が顕著に増加していることを初めて明らかにした。さらに味覚神経の調節作用を持つ神経ペプチド性ニューロンであるニューロペプチドF発現神経細胞が同定されているが、今回、ニューロペプチドFの発現量が加齢に伴い上昇すること、ニューロペプチドF発現神経細胞の投射が加齢に伴い増強することを明らかにした。老齢個体ではニューロペプチドFの発現が増加することにより甘味感受性が上昇し、それにより老齢個体でも強固な報酬記憶が形成される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した内容に関しては、ほぼすべて順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
神経ペプチドdNPF発現神経細胞における神経活動の加齢による変化について検討を行う。dNPF発現神経の活動が上昇することにより、味覚感受性の変化が生じている可能性を考え、神経活動をカルシウムイメージングにより捉え、若齢個体と老齢個体で比較する。
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Causes of Carryover |
研究計画を推進していく過程で、味覚に対する加齢の影響を検討したところ、ハエ老齢個体では若齢個体に比べて甘味に対する感受性が顕著に増加していることを初めて明らかにした。これらについて、現在神経ペプチド性ニューロンの関与について行動解析・イメージング解析をあわせて検討する必要があるため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
味覚神経の調節作用を持つ神経ペプチド性ニューロンであるニューロペプチドF発現神経細胞の投射パターンや、活性について、加齢に伴う影響を解析する。
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