2014 Fiscal Year Research-status Report
社会性昆虫アリの労働分化システムを決定する神経基盤の解明
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26830005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古藤 日子 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80583997)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会性昆虫 / アリ / 労働分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、労働分化システムを制御する神経基盤を分子生物学的に明らかにすることを目的とする。特に社会性昆虫アリが生来もつ労働分化カーストの形成機構に着目し、社会的環境に応じて各個体がその労働行動を柔軟に変化させる神経メカニズムを解明することを目指す。 労働アリの労働カーストは日齢依存的、また環境依存的に決定されることが知られている。本研究では第一に労働分化状態と相関する神経ペプチドを網羅的に探索・同定することを目的としている。ここで、社会環境依存的な労働分化カーストの誘導系を構築する必要がある。そこで、第一に個体レベルでの行動パターン解析を行うために、これまでに報告された個体識別バーコードを用いた行動アッセイシステムの構築を行った。今後は照明条件、飼育条件を検討し、行動アッセイシステムにおいて各個体の致死率が最も低い条件を検討した上で、社会環境依存的な労働行動分化の誘導を試みる。 また、同時に労働アリ個体において遺伝子発現を人為的に操作する系を構築することを試みた。合成したdsRNA(4ug/ant/day)を混ぜた砂糖水を10日間労働アリに与え、その後5日間dsRNAを含まない砂糖水で飼育した後、各個体の全身からRNAを抽出し、定量PCR法により標的となる遺伝子の発現量を調べた。その結果、候補ペプチドであるイノトシンの発現はコントロール群に比較して低下する傾向が観察されたが、個体毎のばらつきが大きく、統計的な有意差は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに計画していた行動アッセイ系の確立は予定通り進行し、既に行動アッセイが可能な状態にある。今後は生態に害をもたらさないような実験条件を検討することを第一に行う。 また、労働アリにおいて遺伝子発現を操作する実験系の確立に関してはやや遅れているが、今後は投与方法や投与期間等を詳細に検討することで効率よく遺伝子ノックダウンの実験系を確立することを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は行動アッセイ系を用いて人為的に労働アリをとりまく社会環境を変化させた際に各個体に労働行動がどのように変化していくか、というプロセスを定量的に記載する。また日齢依存的に確立された労働分化カーストを維持し、外勤・内勤行動の労働アリ個体をそれぞれ採取し、神経ペプチドの発現を網羅的に探索することを目指す。 同時に、RNA干渉法を用いた遺伝子発現操作系の確立を目指し、上記の実験から得られた候補遺伝子に関しては発現操作した個体を用いた行動アッセイを行い、労働分化カーストの形成・維持過程に対する寄与を解明する。
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Causes of Carryover |
行動アッセイシステムに関しては、当初4台のカメラからなるシステムを予定していたが、平成26年度は試作として2台のカメラからなるシステムを構築し、系を確立することに成功した。このため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は前年に確立した手順に添って、同システムを新たに2台構築し、最終的なトラッキングシステムとして完成させる予定である。
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