2014 Fiscal Year Research-status Report
鱗食性シクリッドの右利き・左利きの神経制御に関する構成要素と仕組み
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26830009
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
竹内 勇一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (40508884)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 左右性 / 捕食行動 / 学習 / シクリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物は様々な利き(左右性)を示す。利きが発育上どのように獲得されるのかは、ヒトの利き手においてのみ報告があるが、相当な長期調査が必要なこともあり、いまだに明確な答えが得られていない。私は、利きが明確なタンガニイカ湖産鱗食魚(Perissodus microlepis)を用いて、口部形態と捕食行動の左右性の発達過程を調べた。野外採集した鱗食魚(体長2-10cm)の下顎骨の左右差を計測した結果、プランクトン食である稚魚期でも、その左右差の頻度分布は明瞭な左右二型を示すが、体長とともにその左右差は拡大し、成魚では稚魚期の約4倍に達した。また、鱗食魚の胃から得られた被食魚の鱗の形状を精査して、鱗の由来する体側を割り出し、捕食行動の左右性の度合いを推定した。成魚では、口部形態の利きと合致した体側の鱗を専食していた。一方で、鱗食開始期の鱗食魚では、それとは逆側の鱗も摂食していた。全体としては、捕食行動の左右性は、成長とともに強化されていた。今回の結果から、口部形態の左右差は遺伝的に発達初期から発現していること、捕食行動の左右性は後天的に獲得されることが示唆された。以上は原著論文として投稿中である。 鱗食開始期の鱗食魚では捕食行動の左右性が弱いこと、捕食行動の左右性が発達に伴って強化されることを実験的に検証するために、繁殖で得られた幼魚を用いた捕食行動実験を行った。これらの個体は、ふ化から隔離して飼育し、餌は固形飼料を与えていたため鱗食経験がない。実験用水槽に鱗食魚の幼魚とその餌としてキンギョを入れて、捕食行動を1時間観察した。幼魚は野外での捕食行動と同様に背後から接近するもののキンギョに対して両方向から襲い、襲撃方向の偏りは成魚よりも小さかった。また、捕食行動実験を繰り返す度に、襲撃方向は漸近的に一方向へ偏った。したがって、野外研究で得られた2つの仮説を実験的に実証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画は非常に順調に実行されている。鱗食シクリッドの捕食行動の左右性が学習によって強化される可能性を示して、国内外の学会等で発表を行った。左右性の発達に関する内容は論文を投稿中である。十分な成果が得られたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
鱗食魚の捕食行動の左右性の強化が、鱗食経験によるものなのか、単に体の成長によるものなのかを切り分けて検討するために、鱗食経験のない成魚を用いて捕食行動実験を行うことを予定している。また、捕食行動の左右性を制御する神経機構の解明のために、捕食行動の左右性と後脳マウスナー細胞の関係を初期応答遺伝子の発現により解析する実験も、並行して行う予定である。これにより、マウスナー細胞だけでなく周辺の脳領域も含めて検討できる。魚類で使用できる初期応答遺伝子の検討には、奥野浩行 特定准教授(京都大学)と中町智哉 特任助教(富山大学)に協力していただいている。
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Causes of Carryover |
端数が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に使用する。
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Research Products
(5 results)