2015 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質層形成機構の解析―移動神経細胞が辺縁帯直下で移動を停止するのは何故か?―
Project/Area Number |
26830015
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
片山 圭一 和歌山県立医科大学, 付置研究所, 講師 (20391914)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経細胞移動 / 大脳皮質層形成 / Lis1 / 知的障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質の神経細胞は、早生まれの神経細胞ほど深層に、遅生まれの神経細胞ほど浅層に局在するという“inside-out様式”の6層構造を形成している。脳室帯で誕生し、脳表面に向かって移動してきた神経細胞は、必ず辺縁帯直下で移動を停止し、辺縁帯に侵入することは無い。これは神経細胞が辺縁帯に侵入してしまうと、遅生まれの細胞が入るスペースが無くなり、早生まれの細胞を追い抜くことが出来なくなるからではないかと予想される。言い替えれば、辺縁帯に入らないことで遅生まれの細胞がその間に潜り込んで追い抜くための隙間を作っているのではないかと考えられる。 Lis1 (Pafah1b1)は滑脳症の原因遺伝子として知られているが、Lis1を過剰発現すると、通常は辺縁帯の直下で停止するはずの神経細胞が、辺縁帯内に侵入することを発見した。Lis1を過剰発現された神経細胞の動態について詳細な解析を行ったところ、辺縁帯に侵入した神経細動は、その後も辺縁帯~大脳皮質表層部に位置し続け、最終的に本来配置すべき層よりも表層に位置することが分かった。実際に、1日遅く産まれた神経細胞と位置を比較してみても、それよりも同程度かやや表層に配置する細胞も認められた。以上の結果から、当初の予想通り、辺縁帯に細胞が侵入しないことで遅生まれの細胞がその間に潜り込んで追い抜くための隙間を作っている可能性が示唆された。 Lis1を複数コピーもつ人は知的障害を呈することが知られており、Lis1が過剰になることで神経細胞の移動と層形成に異常を生じることが、生後の大脳皮質の機能に大きな影響を与えるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Lis1の過剰発現により神経細胞が辺縁帯の直下で移動を停止することなく、辺縁帯内に侵入し、その結果として本来の位置よりも表層に配置することを示すことができた。この結果は本研究の開始時に立てた仮説を強く支持するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
最近になって「大脳皮質の神経細胞の最終運命は誕生したときに決まっているのではなく、神経細胞を人為的に本来と異なる場所に配置させると、最終運命が変化し、本来の形や性質が異なる別の種類の神経細胞に変化する」という報告がなされたため、Lis1の過剰発現によって本来の層よりも表層に配置するようになった細胞についても、最終運命が変化しているかどうかについて検索を行いたいと考えている。この実験結果を含めて、すべての研究成果をとりまとめ、できるだけ早期に論文として公表する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、最近発表された論文からヒントを得て新しい実験を加えた方がより良い論文にすることができるのではないかと考え、追加の実験を次年度に行い、その結果を含めて論文を仕上げさせて頂くことにしたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した資金は、追加の実験を行う際の費用(実験動物の購入費および維持費ならびに試薬の購入費)と論文の投稿に関わる諸経費(英文校閲費および掲載料)に使用させて頂きたいと考えている。
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