2014 Fiscal Year Research-status Report
チロシン脱リン酸化酵素SHP-1を介した軸索再生阻害と刈り込みのバランス制御
Project/Area Number |
26830028
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 幸 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (常勤) (60631215)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | SHP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系の発生期には、過剰に軸索が形成されたのち、神経回路に組み込まれなかった軸索が刈り込まれるという過程を経て精密な神経回路が形成される。本研究は、軸索再生を阻害するチロシン脱リン酸化酵素SHP-1が、過剰な軸索の刈り込みを抑制しているか、検証することを目的とする。これまでに申請者はSHP-1を阻害することで、大脳皮質運動野の損傷後に起こる運動機能の自然回復が促されることを見いだした。また、SHP-1を介した軸索伸長阻害の分子機構を明らかにした。このようにして、SHP-1が神経回路の再構築を妨げることが明らかになってきた。その一方で、SHP-1の発現抑制では、側枝形成は顕著であったが、失われた運動機能の一部の回復が認められたのみで、巧緻動作などの精密な運動機能の回復は認められなかった。機能回復が不十分であった原因の一つとして、軸索枝が適切な刈り込みを受けずに過剰に残る可能性が推察された。そこで本研究では、SHP-1を介したシグナル伝達機構を解明し、軸索再生阻害に働く分子が、軸索の刈り込みを調節し、結果的には成熟した神経回路網の形成に必要であるか検証を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、中枢神経損傷後、チロシン脱リン酸化酵素SHP-1を介して、側枝形成と刈り込みのシグナルバランスが制御されているか検証を行う。これまでに、SHP-1の発現を抑制すると、神経回路の再構築に必要な中枢神経軸索の側枝形成が促されることを明らかにした。しかし、中枢神経損傷後失われた機能を取り戻すためには、伸びた側枝が適切な標的細胞と結びつき、不要な側枝が刈り込まれるステップが必要である。 本年度の研究により、中枢神経損傷後、10日目と比較して28日目には側枝数が減少することがわかった。このことから、損傷10日後から28日後の間に側枝の刈り込みが生じていることが推察された。 また、本年度はSHP-1を介したシグナル伝達機構の解明の手がかりとして、SHP-1に結合する因子の探索を行った。培養神経細胞株SH-SY5YにおけるSHP-1結合タンパク質を、MS解析により探索した。その結果、複数の結合因子候補が得られた。現在、SHP-1と候補因子をSH-SY5Yに発現させ、両者が結合することを確認している。
|
Strategy for Future Research Activity |
中枢神経損傷後、皮質脊髄路からの側枝伸長により代償的な神経回路が構築され、一部の運動機能の回復に寄与することが知られている。神経回路の再構築のためには、側枝の伸長と共に過剰に伸長した不要な側枝が刈り込まれるステップが必要である。本研究では、中枢神経損傷後、軸索再生阻害と軸索の刈り込みの間に、SHP-1を介したシグナル伝達経路間のクロストークがあるか検証を行うことを目的とする。本年度の研究により、中枢神経損傷後、側枝の刈り込みが生じるタイムコースと、SHP-1の結合因子候補が明らかになった。次年度の研究では、本研究課題の目的を明らかにするため、以下の項目について、実験を行う。 1) SHP-1欠損マウスでは中枢神経損傷後の側枝形成が促される。このマウスでは、その後に起こるべき軸索刈り込みの過程は障害され、不要な軸索が残存しているか、検証する。 2) SHP-1を介した軸索再生阻害シグナルと軸索刈り込みのシグナル間の連携を明らかにする。本年度の研究で同定された結合因子のうち、軸索再生阻害や刈り込みに関わる因子を検証する。 3) 軸索の伸長と刈り込みのシグナルバランスが、SHP-1により制御されるか、検証する。
|