2015 Fiscal Year Research-status Report
善悪二面性を有するミクログリアのなかで保護的性質を決定する内在性因子は何か?
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26830040
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
田中 達英 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80567032)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | microglia / ATF3 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミクログリアは組織傷害性細胞としての側面と保護性細胞としての側面を持つことから、脳組織に対して活性化ミクログリアはその二面性が議論されるが、この二面性は細胞内でどのように制御されているのかは明らかにされていない。本研究ではミクログリアの傷害的性質の決定と保護的性質の決定にはswitch因子が存在すると考え、ミクログリアの病態への方向性(軽減か憎悪か)を決定する分子機序の解明に着手した。平成27年度は傷害性ミクログリアの性質を制御している内在性因子として、転写因子であるIRF7に着目し、IRF7が傷害性ミクログリアマーカーの発現を制御していることが明らかにすることができた。平成28年度は一転してミクログリアの保護的な機能を司る分子の機能解析に従事した。神経損傷後の保護性ミクログリアの機能を調べるため、マウス舌下神経切断モデルを用いて検討した。申請者は、神経細胞を包囲するミクログリアと包囲しないミクログリアがある点に着目し、両タイプのミクログリアにおける傷害性因子および保護性因子の発現プロファイルや損傷後の神経細胞に対する役割について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
舌下神経損傷後、神経細胞を包囲するミクログリアと包囲しないミクログリアがある点に着目した。特に神経細胞を包囲するミクログリアでは神経栄養因子群を産生することを免疫組織化学、PCR、ウェスタンブロットで時間空間的に明らかにした。また、神経損傷後、神経細胞においても再生関連因子を強く発現するものと発現が低いままの両タイプがあることを見出し、このことがミクログリアによる神経包囲と相関していることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目はミクログリアの保護的な機能を司る分子の機能解析を行うため、マウス舌下神経切断モデルを用いて検討した。舌下神経損傷後に神経核に集積するミクログリアのうち、保護性ミクログリアの性質について詳細に検討し、この成果を論文にまとめて投稿中である。今後は、当初の計画に従い、傷害性ミクログリアから保護性ミクログリアに変換する際に働くswitch因子の同定を試みる。このswitch因子を同定するために、IL-4処理したミクログリアをcDNAマイクロアレイ解析で網羅的に探索する。細胞の分化や表現系変化の起点は転写因子であることが多いことから、網羅的解析を受け転写因子群に焦点を当て、保護性ミクログリアへのswitch因子を絞り込む。さらに、絞り込んだ転写因子群が初代培養ミクログリアにおいてIL-4刺激で発現上昇するかをRT-PCR法、ウェスタンブロット法、細胞染色法で確認する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では傷害性ミクログリアから保護性ミクログリアに変換する際に働くswitch因子の同定を試みていたが、これまでの研究で、期待されるような保護性ミクログリアへのswitch因子は同定できなかった。3年目は当初の計画に従い、傷害性ミクログリアから保護性ミクログリアに変換する際に働くswitch因子の同定を試みるが、このswitch因子を同定するために、RT-PCR法、ウェスタンブロット法、細胞染色法で使用するプライマーや一次抗体が必要になり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
傷害性ミクログリアから保護性ミクログリアに変換する際に働くswitch因子を同定するために、cDNAマイクロアレイ解析、RT-PCR法、ウェスタンブロット法、細胞染色法を用いるが、これに必要な物品にしようする予定である。
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