2015 Fiscal Year Annual Research Report
神経障害性疼痛におけるエピジェネティックサイレンシングの統合的理解
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26830048
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
内田 仁司 新潟大学, 脳研究所, 助教 (30549621)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 神経障害性疼痛 / NRSF / 脊髄後根神経節 / 遺伝子発現 / 転写共役因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに本研究代表者は、末梢神経損傷に起因する慢性疼痛(神経障害性疼痛)の分子基盤として、一次知覚神経でのNRSFを介する疼痛関連遺伝子群のエピジェネティックサイレンシングを解明してきた。一方、最近の報告では、NRSFは多様な転写共役因子と複合体を形成することにより、化学的に安定なエピジェネティクス修飾を誘発し、長期的な遺伝子発現抑制を誘導することも分かってきた。そこで、本研究課題では、神経障害性疼痛におけるNRSFの転写共役因子を機能的に同定するとともに、転写抑制機構に基づく標的遺伝子の分類化を目指す。 研究実施計画に基づいて、最終年度では、前年度計画の継続とともに、制御化合物を用いた機能解析を行った。具体的には、神経損傷後の脊髄後根神経節(DRG)では、特定のNRSF共役因子とともに、その因子と相互作用するヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の発現が増加することを見出した。このHDACは、Muオピオイド受容体(MOP)のNRSF結合部位に結合することがすでに報告されている。HDAC阻害薬であるトリコスタチンA及びバルプロ酸を投与することにより、神経損傷後のDRGにおけるMOPの遺伝子発現低下が抑制された。また、これらの阻害薬処理は、神経損傷後の末梢性及び全身性のモルヒネ鎮痛効果の減弱を有意に改善した(Uchida et al., 2015, J Pharmacol Sci)。一方、神経損傷後のヒストンメチル化については、MOP遺伝子を含むNRSF結合部位において、転写抑制に関わるH3K9ジメチル化が亢進することを予備的に見出した。最近、ジメチル化酵素G9aが神経損傷後におけるMOP発現低下に寄与することが示された(Zhang et al., 2016, J Biol Chem)ことから、今後はG9aの関与の有無に基づく標的遺伝子の分類化が重要であると考えられる。
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