2014 Fiscal Year Research-status Report
成熟小脳において神経回路を維持する1型IP3受容体を介した新たな制御メカニズム
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26830051
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
菅原 健之 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (70584522)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 小脳 / プルキンエ細胞 / スパイン / イノシトール3リン酸受容体 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1型イノシトール3リン酸受容体(IP3R1)を介したプルキンエ細胞のスパイン形成・維持の制御メカニズムについて、IP3R1の下流で関与する分子を明らかにすることである。当初はカルシウム/カルモジュリンキナーゼII(CaMKII)のキナーゼ活性の制御に着目して研究を行う予定であったが、研究を進める過程で、CaMKIIのアクチン束化タンパク質としての機能が重要であることがわかったため、その制御機構に着目して研究を行うことにした。 CaMKIIのアイソフォームのうち、CaMKIIbはアクチン結合領域を有しており、アクチン繊維の束化・安定化を制御している。研究の結果、IP3R1を介した細胞内シグナル伝達において主要な下流分子であるプロテインキナーゼC(PKC)がCaMKIIbをリン酸化することがわかった。そして、このリン酸化によりCaMKIIbのアクチン繊維結合能及び束化能が制御されることが分かった。さらに、CaMKIIbはそのリン酸化状態に応じて、プルキンエ細胞のスパイン形態形成を制御していることが明らかになった。また、細胞内のCaMKIIbのリン酸化状態を評価するツールとしてリン酸化部位特異的抗体を作製し、HeLa細胞への過剰発現系及び小脳神経細胞培養系、マウス脳組織を用いた実験により、このリン酸化反応が実際に生体内でも起こっていることが確認された。 これらの結果は、プルキンエ細胞のスパイン形成・維持を制御するメカニズムにおいて、IP3R1-PKC-CaMKIIbという新たな細胞内シグナル伝達系が重要な役割を果たすことを示唆する非常に興味深い知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、CaMKIIの活性制御に着目した研究を行う予定であったが、研究を進める過程で、CaMKIIによるアクチン繊維の制御が重要であることがわかり、本研究期間内には、この点に着目して研究を行った。そのため研究計画を大きく変更する必要があったが、IP3R1の下流でプルキンエ細胞のスパインの形成・維持を制御し得る分子及びシグナル伝達系について着実に結果を得ることが出来たため、研究全体として概ね順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、PKCがCaMKIIbをリン酸化し、このリン酸化がCaMKIIbによるアクチン繊維の安定性を制御することで、スパインの形成・維持に重要な働きをしていることが示唆された。そのため今後は、このシグナル伝達系がIP3R1の下流で実際に機能してるのか、また、IP3R1を欠損したプルキンエ細胞で起こるスパイン形成異常に関与しているのか、を小脳神経細胞の培養系及びマウス個体を用いた実験で明らかにしていく。
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