2014 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌による腸炎発症・腫瘍転移・感染防御の修飾における糖鎖認識受容体の役割解析
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26830058
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
唐 策 東京理科大学, 生命医科学研究所, 助教 (00572166)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | C型レクチン / 腸内細菌叢 / サイトカイン / 遺伝子欠損マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では、Dectin-1/2の自然発症大腸炎による腸管Th細胞分化のバランス調節における役割の解析を行ったところ、ナイーブT細胞をRag2-Dectin-1/2二重欠損マウスに移入した後、Dectin-1欠損マウスの自然大腸炎の発症はcontrolに比べて緩和されることに対し、Dectin-2欠損マウスでは顕著の変化が見られなかった。Rag2-Dectin-1二重欠損マウスではナイーブT細胞がTreg、Th17細胞により分化しやすくことに対し、Th1細胞に分化し難く、その原因は、Dectin-1欠損マウスでは過剰増殖している腸内乳酸桿菌がTreg、Th17の分化に重要なサイトカインではるTGF-bを強く誘導することが分かった。無菌Dectin-1欠損マウスにSPFの野生型マウスの腸内フローラを定着させた後、一月立つと、無菌野生型マウスに比べ、腸内乳酸桿菌の量が20倍以上上昇し、この乳酸桿菌の定着・増殖は、腸管Dectin-1シグナルに強く制御されることが分かった。Dectin-2欠損マウスはDectin-1欠損に比べて、腸内乳酸桿菌の変化が顕著でなく、腸管での発現を調べたところ、発現レベルが比較的に低いことから、Dectin-2は腸管免疫・腸内フローラの制御には有意な役割を果たしていないのではないかと考えられる。Dectin-1のリガンドであるb-glucanフリー飼料を野生型マウスに投与したところ、野生型マウスの腸内乳酸桿菌の定着量が有意に上昇し、更にDSS大腸炎を誘導したところ、control群に比べて、有意に炎症の抑制効果が見られた。Dectin-1欠損マウスの腸管以外の組織のTreg・Th17を調べたところ、特に野生型マウスとは変化しなかったことから、Dectin-1シグナル欠損による腸管Treg/Th17の上昇は腸管に限定されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の平26年度計画に記載された研究内容を実施した上で、無菌Dectin-1欠損マウスを用いて、腸内乳酸桿菌の増殖は、腸管Dectin-1シグナルに強く依存していることを明らかにした。また、b-glucanフリー飼料、そして酵母由来の可溶性b-glucanを野生型マウスに投与したところ、大腸炎の抑制効果が見られたことと同時に腸内乳酸桿菌の増加、腸管Treg、IL-10産生性T細胞の増殖が認められたことから、Dectin-1を標的とした大腸炎の予防・治療の臨床応用には大変重要な科学的な根拠が得られ、当初の予定より計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られた結果に基にして、平成27年度に結核菌ワクチン接種によるTh細胞の応答・メモリーT細胞の分化におけるDectin-1/2の役割解析、特にDectin-1/2のリガンド投与による結核菌のワクチン効果の増強作用を中心として解析する予定であり、最終的にDectin-1/2シグナルを標的とした新型結核菌ワクチンの開発に役に立つ科学的な根拠を得る目標として研究を推進していこうと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定している平成26年度の研究成果を論文にして、投稿するとに投稿料として用意していたが、論文の投稿は平成27年度に伸ばしたため、その時の投稿料として残していた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度中に論文の投稿料として使用する予定である。
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