2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26830074
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中畑 泰和 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50390810)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞老化 / NAD+代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちのグループは、概日時計とNAD+代謝制御に注目し、分子レベルでの概日時計と老化進行の関連性解明を目指している。本研究課題では、NAD+代謝異常による細胞老化/発がんへの影響を明らかにし、さらにその分子基盤の解明を研究目標としている。 私たちは、これまでに細胞内NAD+濃度が恒常的に上昇しているマウス、すなわち、NAD+再利用経路の律速酵素であるNampt遺伝子を全身性で恒常的に高発現するマウス(Nampt-Tgマウス)を複数ライン樹立した。これら4種類の独立したTgマウスの胎仔由来線維芽(MEF)細胞を用いて細胞老化への影響を調べた。まず各初代MEF細胞で発現する総NAMPTタンパク質量を調べたところ、対照野生型MEF細胞と比して約1.3倍から5倍程度増加していることが明らかになった。総NAMPTタンパク質量に比例し、細胞内NAD+量も1.2倍から2.6倍程度上昇していることが確認できた。これら初代MEF細胞を用いて細胞増殖能を検証したところ、NAMPT/NAD+の増加が最小であったMEF細胞では野生型MEF細胞と同時期に細胞老化を起こしたが、他のNAMPT/NAD+増加が見られたMEF細胞では細胞老化開始の遅延が観察された。さらに遅延の程度はNAMPT/NAD+増加量に依存的であることがわかった。さらに、他の細胞老化マーカーを調べた結果からも同様にNAMPT/NAD+増加量依存的に細胞老化の開始が遅延することが示唆された。また、細胞老化遅延を惹起する分子機構のひとつとして、酸化ストレスに対する抵抗性が上昇したためである可能性を示唆する知見を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題開始以前に初代Tg-MEF細胞で細胞老化遅延が惹起されていることをひとつのラインで確認していたが、この細胞老化遅延がNAMPT/NAD+増加量依存的であるのか、また、NAMPT/NAD+増加による細胞老化遅延が、細胞が受けるストレスの軽減による健康的な老化遅延(Healthy Aging Delay)なのか、異常増殖 (Malignant Transformation)によるものかを明らかにすること、さらにその分子基盤を明らかにすることが本研究課題の目的である。 これまでにNAMPT/NAD+増加量依存的に細胞老化遅延が引き起こされることを明らかにした。さらにこの細胞老化遅延の原因として、細胞の異常増殖ではなく、抗酸化ストレス遺伝子の発現量上昇による細胞内活性酸素種の減少である可能性、すなわちHealthy Aging Delayの可能性を示唆する知見を得ることができたため、ほぼ順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、NAD+の上昇が細胞老化を遅延させているのかを直接証明する。またどのような分子の活性化/不活性化が抗酸化ストレス遺伝子の発現上昇を引き起こしているのかを明らかにすることでNAMPT上昇による細胞老化遅延の分子基盤の一端を解明する。 一方で、活性型Ras導入などによる強制的な細胞がん化に対するNAMPT/NAD+の影響についても検証していく予定である。具体的には細胞レベルでは、足場非依存性増殖、解糖系に依存したATP合成の割合などを検証する。生体レベルでは、活性型Ras などを導入したTg/野生型-MEF細胞をそれぞれマウス皮下に注入し、がん細胞の大きさ、遺伝子発現などを調べる。
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