2014 Fiscal Year Research-status Report
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26830090
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
藤下 晃章 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 研究員 (50511870)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マウスモデル / 大腸がん |
Outline of Annual Research Achievements |
KRas変異大腸がんにおけるPI3K-mTOR経路およびMAPK経路の活性化状態の確認 腸管ポリープを自然発生するApcマウスにタモキシフェン制御型腸管特異的Cre発現マウスとCre依存的変異型KRas発現マウスを交配し、腸上皮細胞で変異型KRasを発現するマウス(Apc/KRas)を作出した。生後6週齢からタモキシフェンを1週間連続で投与し、12週齢でのApc/KRasマウス腸腫瘍の組織学的解析を行ったが浸潤や転移が認められず、腫瘍上皮の形態もApcマウスと比較し違いは認められなかった。またMAPK経路とPI3K-Akt-mTOR経路の活性化をそれぞれリン酸化ERKとリン酸化S6抗体を用いた免疫染色により確認したが、リン酸化S6の発現はApcマウスの腸管腫瘍と比較して増大が認められず、リン酸化ERKの発現はApc/KRasマウス、Apcマウスともに腫瘍上皮で発現低下していた。以上の結果は、自然発生したポリープ内で腸管特異的Creが機能せず変異型KRasが発現していない、または変異型KRasは発現しているが腸管腫瘍で機能していない可能性が考えられる。従って現行の方法で変異型KRasの役割を検証する事は困難であることから、Apcマウスの代わりにCre発現依存的安定型b-Catenin(Ctnnb)発現マウスを用い、Creが作用した部位でWnt経路の活性化により腫瘍を形成し、さらにその部位のみ変異型KRasも発現するCtnnb/KRasマウスを作出し解析している。 mTOR阻害薬をCtnnb/KRasマウスに投与しKRas変異大腸がんの形成におけるPI3K-mTOR経路の役割を解明及び、mTOR阻害薬耐性機構の解明と新規治療標的の探索 現在少数であるが先行してCtnnb/KRasマウスにmTOR阻害薬AZD8055を投与したところ投与4週において腫瘍形成を抑制していたが、8週後にはコントロールと比較して腫瘍の抑制効果は認められなかった。以上の結果から変異型KRasがmTOR阻害薬に対し抵抗性を示す可能性があり、現在このメカニズムの解明を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に計画した1) KRas変異大腸がんにおけるPI3K-mTOR経路およびMAPK経路の活性化状態の確認、及び2) mTOR阻害薬をApc/KRasマウスに投与しKRas変異大腸がんの形成におけるPI3K-mTOR経路の役割を解明すると共に、mTOR阻害薬耐性機構の解明と新規治療標的の探索は、上述の研究実績の概要で記載しきれない分も含めある程度達成している。現在解析用のマウスを増やし、平成26年度のmTOR阻害薬AZD8055と平成27年度分のMEK阻害薬trametinibを用いた解析を並行して行っている。新たに必要となった実験も含めて、平成26年度中にある程度進められている。特にKRasに変異の無いApcマウスの腸管腫瘍におけるMAPK経路の役割を解明し、以下の内容を既に論文発表した。腸管腫瘍におけるMAPK経路活性化は腫瘍上皮でなく腫瘍間質細胞で認められ、特に血管内皮細胞や繊維芽細胞が大部分を占めている。この間質細胞のCOX2の発現をMAPK経路が制御しており、MEK阻害薬trametinibをApcマウスに投与するとCOX2とその下流のCCL2の発現、さらに血管新生を抑制し腫瘍形成を抑制した。
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Strategy for Future Research Activity |
解析用のマウス(Ctnnb/KRasマウスおよびその比較対象のCtnnbマウス)を繁殖し、変異型KRasがPI3K-mTOR経路およびMAPK経路の活性化状態やその他腸管腫瘍形成に関わるシグナル経路に与える影響について解析する。また平成26年度のmTOR阻害薬AZD8055と平成27年度分のMEK阻害薬trametinibを用いた薬剤耐性腸管腫瘍の検討を並行して行い、各阻害薬の腸管腫瘍形成に対する影響を腫瘍形成数の変化やHE染色、BrdU染色による組織学的解析により検証する。その結果を野生型KRasマウス(Ctnnbマウス)の腸管腫瘍と比較し、変異型KRasによる阻害薬耐性腸管腫瘍の発生を確認する。各阻害薬に抵抗性が認められた腸管腫瘍での増殖シグナルや遺伝子発現の変化をプロテインアレイ及びマイクロアレイにより検証し、耐性化に関わる分子やシグナル経路を確認する。変異型KRasマウスにおける腸管腫瘍やmTOR阻害薬またはMRK阻害薬耐性腸管腫瘍で変動のある分子やシグナル経路に対する阻害薬が存在すれば入手し、各阻害薬と併用することで耐性化した腸管腫瘍の発生を抑制可能か検討する。またヒト大腸がんの組織標本またはヒト大腸がん細胞株を用いKRas変異と阻害薬耐性化に関わる分子の発現やシグナル経路の関係を調査する。
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Causes of Carryover |
財団(安田記念医学財団と鈴木謙三記念医科学応用研究財団)からの助成金を合計二百万円頂いた。そのため本研究費の一部を27年度に繰り越し、新たに必要となったCtnnb/KRasマウスの繁殖とそれに必要な試薬や物品等(マウス餌代、mTOR阻害薬AZD8055)の購入に補充する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画に変更はなく、既に計画している27年度の物品費のうち消耗品(mTOR阻害薬等)9万円は既に購入済みであり、マウス餌代とマウス購入費4万円に追加し利用する。
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