2015 Fiscal Year Research-status Report
がん微小環境中にリンパ組織様構造の形成を誘導する新規細胞免疫療法の開発
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26830107
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
安達 圭志 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40598611)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 次世代型キメラ抗原受容体発現T細胞 / サイトカイン / ケモカイン / がん / 抗がん効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、より効果的に抗がん作用を発揮する次世代型キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor: CAR)発現T細胞を用いた、新たながん治療法を創出することを目的としている。平成26年度までに、自己切断能を有するピコルナウイルス由来2Aペプチドを利用して、がん抗原特異的なCARと共にT細胞の生存および遊走に関わるサイトカインとケモカインを一細胞に同時に発現させるためのコンストラクトを作成し(以下、次世代型CARとする)、実験的がんマウスモデルにおいて、次世代型CAR-T細胞が従来型CAR-T細胞よりも優れた効果を発揮することを明らかにした。平成27度は、次世代型CAR-T細胞がその抗がん効果を効率よく発揮するための免疫学的環境を検討するため、以下のことが実施された。 1.組織学的解析の結果、次世代型CAR-T細胞が投与されたマウスの腫瘍組織内には、多数の免疫担当細胞が浸潤しており、腫瘍局所で免疫応答が起こっていることを示唆する像が得られた。 2.腫瘍組織内に浸潤している細胞は、ドナー由来だけではなく、レシピエント(ホスト)由来の細胞も混在していた。 3.サイトカインのみを産生するCAR-T細胞、ケモカインのみを産生するCAR-T細胞を作成し、次世代型CAR-T細胞とin vivoにおける抗がん効果を比較したところ、次世代型CAR-T細胞ほどの抗がん効果は認められなかった。 4.サイトカインのみを産生するCAR-T細胞とケモカインのみを産生するCAR-T細胞の両方を担がんマウスに投与しても、次世代型CAR-T細胞ほどの抗がん効果は認められなかった。 以上のことから、次世代型CAR-T細胞のin vivoにおける抗がん効果は、サイトカインとケモカイン、両方の因子が一細胞から同時に産生され、免疫担当細胞を局所に集積させることに依存していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した計画では、平成27年度中には、次世代型CAR-T細胞がin vivoにおいてその抗がん効果を効率よく発揮するための免疫学的環境およびそのメカニズムを検討するデータを集積する予定であった。実際に、上記の1~4に示したように、ほぼ予定していた通りのデータを集積することができた。 以上のようなことから、『(2)おおむね順調に進展している。』と自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書の計画に記した通り、平成28年度中は、『次世代型CAR-T細胞により誘導される抗腫瘍効果において、どのような内因性(レシピエント由来)免疫細胞との相互作用が必要なのか』について検討する予定である。様々な免疫細胞について、遺伝子改変マウス、あるいは抗体投与などによってそれらの細胞群を除去したマウスをレシピエントとしたモデルにおいて次世代型CAR-T細胞の効果を詳細に解析し、腫瘍退縮に重要な内因性免疫細胞の同定を行う。 また同時に、実際の臨床の現場で重要な現象とされている” エピトープスプレッディング”に着目し、次世代型CAR-T細胞投与マウスにおいて誘導されるのか否か、また誘導されるのであればそのメカニズムを解析し、より安全で効率的な治療法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
物品費の購入に関し、特に消耗品に関して、緊急性のない場合は、製造業者が期間限定で行う割引キャンペーン期間中に購入することを心がけていた。この未使用額については、平成28年度に行う予定のマウスを用いたin vivo実験におけるマウス、および使用する試薬類の購入費などと併せて使用する予定である。 また、旅費に関し、昨年11月に札幌で開催された日本免疫学会学術集会に参加する予定であったが、申請者の所属する山口学内において、学生実習の日程と重なってしまったために参加できなかった。そのため、旅費や参加費について未使用額が生じた。この未使用額については、平成28年度の学会への旅費、参加費と併せて使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
『今後の研究の推進方策』にも記したが、本年度の当初計画を発展させた新たな方策として”エピトープスプレッディング”に関する研究も行う予定である。この実験系は主にマウスを用いたin vivoで行うことになるため、かなり多くのマウスを消耗品として購入する予定である。 また、平成28年度は本研究課題の最終年度ということもあり、学会や論文など、積極的に研究成果を外部に発表していく予定であるため、旅費や学会参加費、論文投稿料などにも多く支出を行う予定である。
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