2014 Fiscal Year Research-status Report
酢酸菌・近縁種内の比較ゲノム・フェノーム解析に基づく種内の機能比較
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26830126
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松谷 峰之介 山口大学, 農学部, 研究員 (70380558)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドラフトゲノム解析 / 同一種多株間比較ゲノム / 表現型解析 / Acetobacter pasteurianus / 酢酸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
酢酸菌Acetobacter pasteurianusは自然発酵系で見出されており、食酢の醸造など産業的に広く用いられている。我々は,これまで酢酸菌の酸化発酵能を,酢酸菌属間および種間の違いを明らかにするという一般的な視点で研究を進めてきた。しかし、今回単一の種に限定し、その中の多菌株の比較ゲノムおよびフェノーム(網羅的表現型)解析から、その機能を解析する新しい研究手法の確立を目指している。 平成26年度はドラフトゲノム情報の取得と解析およびこれらの菌株の表現型(特に耐熱性)の解析を行った。既知の3株に加えて近縁な9株のゲノム配列をIlluminaシークエンサにより取得した。これらの菌株のうち7株については16S rRNAの塩基配列が互いに100%一致しており、正確な系統関係の推定が不可能であった。そこで既知の3株を加えた12株のドラフトゲノムの共通遺伝子を用いたゲノムレベルの系統樹を構築したところ少なくとも4つのサブグループに別れることが明らかとなった。ドラフト配列同士の比較アラインメントでは、これらのサブグループ内のゲノム間の変異箇所はエラーを含めても約200程度とほとんど同一であることがわかった。 表現型解析についてはゲノム情報が既知の3株と合わせて計12株間での生育限界温度の解析を試みた。その結果、非常に近縁なサブグループ内においてさえ耐熱性が大きく異なるものが見出された。またタイにおいて単離されたSKU1108株の耐熱性が他の株よりも飛び抜けて優れていたことから、より詳細な解析を進めるために、現在PacBioシーケンサを用いたこの株のコンプリートゲノム情報の取得を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の初年度の到達目標は同一種の非常に近縁な株間での表現型の違いとその要因をゲノム配列情報の比較により明らかにするというものであった。初年度において類縁の9株のゲノム配列を得られたことにより、次年度以降に行う比較ゲノム解析と表現型比較のための情報学的基盤の構築を進めることが可能となった。 その第一段階として、平成26年度の成果では、一般的な系統関係の推定に用いられる16S rRNAでは分類不可能な近縁株間の系統関係をゲノム配列の情報を用いて構築して、極めて近縁なサブグループを定義できたことで表現型比較のための第一段階はクリアしたこととなる。これで株間の系統関係が明らかとなったので、サブグループ内部の表現型の比較に進むことが可能となる。またこれらのグループ間の遺伝子レパートリを比較することにより特定のグループのみが有する機能推定を行うことが可能となるものと思われる。 表現型の比較についても現在のところ耐熱性の比較が進められており様々な知見が得られつつある。 このため本研究課題は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに比較ゲノム解析のための基盤情報を得ることができたと考えているので、今後は本格的な遺伝子レパートリの比較解析を進めていきたいと考えている。具体的には酢酸菌において重要な役割を果たしていることが知られている呼吸鎖の遺伝子群および膜結合型の酸化還元酵素群の比較、類縁種Acetobacter tropicalisですでに明らかにされている酢酸菌の耐熱性の維持に寄与する遺伝子群のレパートリ比較などを計画している。近縁株間での様々な表現型を集めつつ、これらの表現型に直接影響を及ぼす可能性がある遺伝子レパ-トリおよび変異についての解析を進めていきたい。 サブグループ内部の表現型の違い(特に耐熱性)を説明するために、変異箇所について詳細な解析を進めていきたい。 また他のグループよりも飛び抜けて高い耐熱性を示すSKU1108株については、完全長ゲノム配列を決定して他の耐熱性の弱い株の完全長ゲノム配列との比較から耐熱性の違いを左右している因子の抜き出しを目指す。 また前年度から継続して、これらの菌株についてさまざまな表現型を決定して、ゲノム情報との比較解析を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、ドラフトゲノムシークエンスの解析を北海道システムサイエンスなどの受託解析に委託する計画であったが、東京農業大学・生物資源ゲノム解析センターの支援を受けることができたため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はゲノム情報解析のためのソフトウェア、高速なコンピュータ、表現型解析のための試薬および機器などの購入の経費として計上した。 以上のような研究費の使用計画に沿って、上述した研究計画を実施する予定である。
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Research Products
(6 results)