2015 Fiscal Year Research-status Report
酢酸菌・近縁種内の比較ゲノム・フェノーム解析に基づく種内の機能比較
Project/Area Number |
26830126
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松谷 峰之介 山口大学, 農学部, 研究員 (70380558)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ドラフトゲノム解析 / 同一種多菌種間比較ゲノム / 表現型解析 / Acetobacer pasteurianus / 酢酸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
酢酸菌アセトバクター・パスツリアヌスは自然発酵系で見出されており、食酢の醸造など産業的に広く用いられている。我々は、これまで酢酸菌の酸化発酵能を酢酸菌属間および種間の違いを明らかにするという一般的な視点で研究を進めてきた。しかし今回単一の種に限定し、その中の多菌株の比較ゲノムおよびフェノーム(網羅的表現型)解析から、その機能を解析する新しい研究手法の確立を目指している。 初年度は9株のドラフトゲノム配列の取得と解析およびこれらに既知の計12株間での生育限界温度の解析をおこなった。その結果、非常に近縁なサブグループ内においてさえ耐熱性が大きく異なる日本由来の3株からなるグループ1が見出された。またタイにおいて単離されたSKU1108株の耐熱性が他の株よりも飛びぬけて優れて高いことが見出された。 これらの情報を踏まえて27年度はゲノム情報から耐熱性の違いを規定している因子の特定を試みた。我々が以前明らかにしている酢酸菌の耐熱性を保持するのに重要な24の耐熱遺伝子について、グループ1の3株内で配列比較を行った結果、耐熱遺伝子の1つであるNa+/K+アンチポーターに耐熱性が低い2つの株でそれぞれアミノ酸2残基、4残基の欠損・挿入が存在していることが見出された。現在これらの遺伝子変異が耐熱性に及ぼす影響について実験的な検証を進めている。 また、耐熱性が他の株よりも飛びぬけて優れている、タイにおいて単離されたSKU1108株の完全長ゲノム配列の取得をPacBio RSIIゲノムシークエンサを用いて行った。1本の染色体と4本のプラスミドが得られた。非耐熱株との比較ゲノム解析から耐熱遺伝子の1つであるxanthine dehydrogenase XdhAに耐熱性に影響を及ぼすと考えられるアミノ酸置換が非耐熱株の遺伝子にかかっていることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の2年目の到達目標は、近縁株間で耐熱性に違いが生じる原因を比較ゲノム解析により明らかにするというものであった。初年度において9種のゲノム配列を得られたため、それらの情報をもちいて耐熱因子の探索が可能となった。 いくつかの耐熱性と関連のある遺伝子に直接耐熱性に影響を及ぼすような遺伝子変異を見出すことができ、それらの遺伝子の表現型比較が進行中である。 特に耐熱株SKU1108については現在論文を投稿中であり、近いうちに出版されることが期待される。 このため、本研究課題は概ね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに比較ゲノム解析により酢酸菌アセトバクター・パスツリアヌスの表現型の違いの原因を解明するための足がかりの構築ができたと考えているので、それらについての実験的な検証を進めて行きたいと考えている。 今後は、研究成果を論文としてまとめるために、取得したゲノム情報をDDBJなどの公共データベースに登録して論文化への準備を進めるとともに酢酸菌コア遺伝子の同定および耐熱遺伝子の実験的な検証および酢酸耐性能などの耐熱性以外の表現型に寄与する遺伝子の同定などを進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
当初の予定では、ドラフトゲノムシークエンスの解析を北海道システムサイエンスなどの受託解析に委託する予定であったが、東京農業大学・生物資源ゲノム解析センターの支援を受けることができたため、26年度の予算に次年度使用額が発生した。 この予算の一部については27年度に研究試薬などの経費に用いたが金額が大きいために、最終年度においても次年度使用額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はゲノム情報解析のためのソフトウェア、高速なコンピュータ、表現型解析のための試薬および機器などの購入の経費として計上した。 以上のような研究費の使用計画に沿って、上述した研究計画を実施する予定である。
|
Research Products
(5 results)