2014 Fiscal Year Research-status Report
DNA鎖間架橋修復に重要なFAN1ヌクレアーゼの機能解析
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26830128
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 浩一 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (60708585)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | FAN1 / Fanconi anemia / DNA crosslink / Nuclease |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA損傷の中でも、DNA の相補鎖間が共有結合で架橋される「DNA 鎖間架橋(ICL)」は、二重鎖 DNA の一本鎖への開裂を阻害するため、細胞毒性が極めて高い。ヒトをはじめとする高等真核生物では、遺伝性疾患として知られるFanconi anemia(FA)の原因遺伝子産物群によりICLが修復されることがこれまで明らかになっている。 DNA 複製の際に複製装置が ICLで停止すると、2つのFA原因遺伝子産物からなるFANCI-FANCD2複合体がモノユビキチン化され、ICLに集積する。モノユビキチン化されたID複合体は、FAN1ヌクレアーゼをリクルートし、ICL除去反応を触媒すると考えられているが、その分子メカニズムは全く明らかになっていない。本研究目的は、ICL修復反応の中心的な過程であるFAN1によるICLの除去機構を、生化学的・細胞生物学的手法によって明らかにすることである。 平成26年度の研究では、まずFAN1の生化学的機能解析を行うため、大腸菌を用いてFAN1を高純度かつ大量に精製する系を確立した。続いて、精製したFAN1タンパク質と停止した複製フォークを模した5’ flapped DNAを用いて、FAN1のヌクレアーゼ活性を評価する実験系を確立した。この解析系の確立により、5’ flapped DNAにおけるFAN1の切断点を同定した。停止した複製フォークの単鎖領域にはRPAが集積することが知られているため、次に5’ flapped DNAにRPAが結合した基質を作製し、その基質におけるFAN1のヌクレアーゼ活性を解析した。その結果、FAN1はより生理的な環境を模したこのDNA基質も同様に認識し、切断できることが明らかになった。これらの解析から、FAN1の基質認識機構の一端を解明した。なお、この成果は、「Journal of Biochemistry誌」に申請者を共同第一著者として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、FAN1によるICLの除去機構を生化学的・細胞生物学的手法によって明らかにすることである。本研究の初年度となる平成26年度では、以下2点の生化学的解析を計画した。 (1) FAN1をリコンビナントタンパク質として精製し、FAN1のヌクレアーゼ活性を評価する実験系を確立する。 (2) 精製したID複合体を試験管内でモノユビキチン化し、精製する。精製したID複合体を複製フォーク様DNA基質に結合させ、その後FAN1を添加することで、ユビキチン化ID複合体とFAN1によるDNA切断活性を解析する。 本研究ではいずれの計画も遂行することができた。(1)の解析では、計画に加え、より生理環境に近いDNA基質を用いてFAN1の機能解析を行い、その成果を論文として発表した。また、FAN1の基質認識に重要なアミノ酸を変異体解析により同定した。(2)の解析では、モノユビキチン化したID複合体がDNA基質に結合することより、FAN1のヌクレアーゼ活性が強く阻害されることが明らかになった。また、精製タンパク質を用いたプルダウン法により、FAN1はそのN末端372アミノ酸の領域で、ID複合体に直接相互作用することが明らかになった。更に、FANCD2及びFANCI変異体を用いて詳細な生化学的解析を行ったところ、ID複合体中のFANCD2のDNA基質への結合が、FAN1のヌクレアーゼに阻害的であることが明らかになった。これらの解析から、FAN1はID複合体と同時に5’ flapped DNAを認識し切断することができないことを明らかにした。 上記の解析の他に、本研究では平成27年度に計画していたモノ・ジ・トリヌクレオソーム基質の作製を完了させた。今後は、これらのクロマチン基質を用いて、FAN1のクロマチン上における活性を解析する予定である。以上のように、本研究の進展は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、裸のDNAにおけるFAN1の生化学的解析を行った。平成27年度は、モノヌクレオソームとクロマチン基質を用いて、クロマチン上におけるFAN1の活性を解析する予定である。まず、調製したモノ・ジ・トリヌクレオソームとFAN1を混合し、ヌクレオソーム上におけるFAN1のDNA切断活性を解析する。FAN1のヌクレアーゼ活性は、平成26年度に確立した解析手法を用いて行う。次に、ID 複合体のヒストンシャペロン活性が、FAN1 のヌクレアーゼ活性に及ぼす影響を解析するため、まずジまたはトリヌクレオソームを用いて ID 複合体をモノユビキチン化する。その後、FAN1とコアヒストンをこの系に添加し、FAN1のDNA切断活性を解析する。 一方、これまでの解析で、昆虫細胞から精製したFAN1は特定の5箇所がリン酸化されることを見いだしている。特定のリン酸化酵素を用いた試験管内リン酸化反応でも、FAN1の同じ箇所が修飾されることを平成26年度の解析で明らかにしている。平成27年度では、このFAN1の翻訳後修飾が、自身の細胞内局在及び、 ICL 修復に及ぼす影響解析するために、まず FAN1 がノックアウトされたニワトリ DT40 細胞株を作製する。その後、リン酸化部位をアラニンに置換したニワトリ FAN1 をノックインする。この細胞株を用いて、ICL 損傷依存的な FAN1の核内フォーカスの形成効率を解析する。次に、同細胞株のICL 感受性をコロニー形成アッセイにより解析し、この翻訳後修飾の ICL 修復における役割を解析する。並行して、平成26年度の変異体解析で得た、エクソヌクレアーゼ活性のみを持たないFAN1変異体を、FAN1ノックアウトDT40細胞に発現させ、FAN1のエクソヌクレアーゼ活性の意義について解析する。 以上の解析により、FAN1とID複合体によるICLの切り出し機構のモデルを構築する。
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[Journal Article] FANCD2 Binds CtIP and Regulates DNA-End Resection during DNA Interstrand Crosslink Repair2014
Author(s)
Junya Unno, Akiko Itaya, Masato Taoka, Koichi Sato, Junya Tomida, Wataru Sakai, Kaoru Sugasawa, Masamichi Ishiai, Tsuyoshi Ikura, Toshiaki Isobe, Hitoshi Kurumizaka, Minoru Takata
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 7
Pages: 1039-1047
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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