2015 Fiscal Year Research-status Report
異種生物ゲノムを利用した新規iPS細胞化機構解析系の確立
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26830138
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 隆 京都大学, iPS研究所, 研究員 (60570752)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子資源 / 異種生物遺伝子 / iPS細胞 / Wolbachia / 生殖異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、強制発現やノックダウン法では発見しにくい経路の発見につながりうる低分子化合物スクリーニングの特長をもちながら、欠点である「当たり」確率の低さを克服できる可能性のある、「異種生物遺伝子を用いた新規iPS細胞化メカニズム解析系」を確立しようとするものである。前年度までに、マウスの神経前駆細胞に対し、昆虫の細胞内共生細菌であるWolbachiaのうち宿主に生殖異常を引き起こすものに特異的な遺伝子のうち30個を用いたスクリーニングを行ない、8個の有効果遺伝子を同定した。 本年度は、それらが他の細胞種に対しても効果を示すのかどうかを調べるために、マウス肝芽細胞とマウス胎児繊維芽細胞のiPS細胞化に対する効果を検討し、これらのうちの4つが複数の細胞種のiPS細胞化に対して効果を示すことを明らかにした。EGFPとの融合蛋白質を強制発現させたところ、そのうちの一つは核局在を、もう一つはアクチン骨格に相互作用をすることが示唆された。 次に、その4因子のうち3つについて、哺乳類細胞内での相互作用蛋白質を同定するために、3xFlagタグ付きの融合蛋白質を強制発現し、免疫沈降と質量分析によって共沈する蛋白質を調べたところ、多くの蛋白質が候補として同定された。現在はその再現性の確認を行なっているところである。 なお、Wolbachiaが引き起こす生殖異常の分子メカニズムは不明であり、本研究の知見はその解明にも貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
例として用いたWolbachia遺伝子について、スクリーニングに用いたわずか30遺伝子の中から数個という極めて高い確率で、iPS細胞化に影響する因子が同定できており、しかもその半数が複数の細胞種にまたがって効果を示した。このことは、高確率に「当たり」を同定できる系を作るという狙い通りのものである。また、それらと相互作用する哺乳類蛋白質も同定されつつある。しかしながら、iPS細胞化に関わる経路の同定段階にはまだ至っていないことから、この評価が適当であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したWolbachia蛋白質と相互作用する哺乳類蛋白質を確定させるとともに、それらのうち、iPS細胞化に影響するものを同定する。また、前年度までに作製しつつも発現量が低く、うまく機能していなかったWolbachiaとBifidobacteriumのゲノムワイド発現ライブラリーによるスクリーニング条件をより詳細に検討し、使用することで、本研究で確立を目指す系の有用性をより高める(より有用度の高いことができることを例示する)。
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Causes of Carryover |
解析対象とした公開されているバクテリアのゲノム情報がプロジェクトの途中でアップデートされたため、対象の選定およびスクリーニングを一部やり直す必要が生じ、当初の計画よりも遅れが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スクリーニングによって同定されたWolbachia蛋白質の哺乳類細胞内での相互作用相手の機能解析と、作成済みのWolbachiaとBifidobacteriumのゲノムワイド発現ライブラリーによるスクリーニングを予定している。これらに用いる分子生物学実験試薬、細胞培地およびその他消耗品と、成果発表のための学会参加費に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)