2014 Fiscal Year Research-status Report
チャマダラセセリの生息と人間の土地利用と共存のメカニズム解明
Project/Area Number |
26830143
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
江田 慧子 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (90648461)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チャマダラセセリ / 生息域外保全 / ミツバツチグリ / キジムシロ |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目はチャマダラセセリの生息地での密度調査と室内飼育実験を行うことを目的とした。 長野県開田高原のチャマダラセセリは長野県指定希少野生動植物に指定されており、個体群は危機的な状況である。2014年の調査では、5月の1化目の成虫は10日間定点調査をしたが、オス1個体、メス2個体を確認したのみであった。メス2個体を確保したが、産卵せず未交尾であると考えられることから、ただちに生息地に還した。卵・幼虫の密度調査の結果は、春(1化目)は、ミツバツチグリ3629枚、キジムシロ2736枚、夏(2化目)は、ミツバツチグリ2607枚、キジムシロ446枚を探索したが、卵・幼虫を発見することはできなかった。以上のことから、開田高原では絶滅の危機に瀕していることが明らかとなった。 そこで、室内飼育実験の材料としては同じ御嶽山麓の他地域の個体群を用いた。この実験においては今までチャマダラセセリにおいては人為的に行うことが困難であった交尾技術の確立を行うことができた。具体的には30回の交尾実験を行ったところ5ペア成功した。成功率は16.7%であった。成功例におけるオスの平均羽化後日数は4.8日、メスの平均羽化後日数は2.4日、交尾時の平均気温は30.7℃であった。一方、失敗した場合はそれぞれ5.1日、2.6日、29.1℃であった。成功例と失敗例のオスとメスの羽化後日数の間には有意差はなかった。成功例は失敗例より有意に気温が高かった。成功したペアにおける平均交尾時間は38.75分であった。 さらに交尾が成功した5個体のメス成虫を使って、リシャール式採卵法で産卵させたところ、平均産卵数は35.4卵であった。 この結果により、チャマダラセセリの累代飼育技術が確立され、チャマダラセセリ開田高原個体群の生息域外保全に関する科学的データを蓄積することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チャマダラセセリの長野県開田高原個体群は危機的な状況であることから、当初計画した開田高原個体群を用いて実験を行うことができなかった。 卵と幼虫の密度調査を実施したが、個体を確認することはできなかったため、野焼きがチャマダラセセリに及ぼす影響については検証することができなかった。 しかし、同じ御嶽山麓の個体群を用いて、当初の室内飼育実験は予定通り実施することができ、特に今まで成功の事例が報告されていなかったチャマダラセセリ交尾技術の確立を行うことができた。 この成果は学会で発表し、論文を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
チャマダラセセリのさらなる生息域外保全のデータを蓄積するために、卵・幼虫期の有効積算温度と発育零点を算出する実験を継続中である。また、チャマダラセセリは部分2化すると言われているが、どのような条件で化性が変わるのかは全くわかっていない。現在、日長条件を変えて飼育をおこない、部分2化の出現要因を明らかにしていく予定である。 チャマダラセセリの最適な環境を知るために海外での調査する予定である。具体的には海外のチャマダラセセリをDNA解析し、日本産と同種か確かめる。さらに、海外に生息するチャマダラセセリの生息環境を調査し、日本との生存戦略の相違点を探る。
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Research Products
(3 results)