2015 Fiscal Year Research-status Report
新規Aurora基質タンパク質による染色体分配メカニズムの解析
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26840007
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲見 恵理 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80710615)
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Project Period (FY) |
2015-03-01 – 2017-03-31
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Keywords | 紡錘体 / 染色体分配 / 分裂 / 動原体 |
Outline of Annual Research Achievements |
Auroraは細胞分裂において様々な段階に深く関わっており、未だ解明されていない多くの役割が存在する。申請者は網羅的解析により、Aurora kinaseの新規基質を見出した。新規Aurora基質の発現を抑制したところ、細胞分裂時に染色体分配の異常が観察された。本研究では新規Aurora基質の細胞分裂における染色体分配制御を明らかにすることを目的としている。平成27年度は計画に従い以下の実験を行った。 1 、新規Aurora基質抑制時の分裂期染色体が赤道面へ整列できなくなる原因として、紡錘体、動原体の形成異常、または動原体と微小管の接着異常が考えられた。申請者は紡錘体の形成をタイムラプス顕微鏡で観察した結果、新規Aurora基質発現抑制時には紡錘体形成の異常が観察された。またRegrowth assayにおいても形成異常が観察され、新規Aurora基質は紡錘体形成に重要な役割をすることが示唆された。 2、新規Aurora基質の結合タンパク質を探索した結果、動原体局在タンパク質との結合が認められた。そこで新規Aurora基質の動原体への局在を調べた結果、動原体への局在は認められなかった。また、新規Aurora基質発現抑制時の動原体タンパク質の局在を調べたところ、局在の変化は観察できなかった。 以上の結果より、新規Aurora基質発現抑制時には紡錘体形成が異常をおこし、その結果染色体の動原体へとの結合がうまくいかず、分裂期の染色体が赤道面へ正しく整列できなくなることが示唆された。新規Aurora基質の結合タンパク質の中には紡錘体形成に関わるタンパク質があり、現在そのタンパク質との解析を進めている。 本研究は申請者が産前産後休暇、育児休業取得のため平成26年6月1日~平成27年3月31日まで中断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規Aurora基質タンパク質が染色体分配にどのように関わっているかを明らかにするのが本研究の目的である。平成27年度は新規Aurora基質の発現抑制時に染色体が赤道面へ整列しない原因を明らかにした。具体的には計画していた、タイムラプス顕微鏡による紡錘体形成の様子、regrowth assay を行い、紡錘体形成異常を起こしていることを明らかにした。また新規Aurora基質が動原体において機能しているかを明らかにするために、新規Aurora基質の動原体への局在、新規Aurora基質発現抑制時の動原体タンパク質の局在を調べた。その結果新規Aurora基質は動原体への機能は認められなかった。当初計画していた内容は概ね実行することができ、新規Aurora基質が紡錘体形成に重要であることを明らかにした。よって計画は概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は新規Aurora基質のリン酸化部位を同定する。新規Aurora基質にはAuroraにリン酸化される可能性のある部位がいくつか存在する。そのリン酸化部位を同定するために、質量分析装置を用いた網羅的なリン酸化部位の同定を行う。効率よく新規Aurora基質を免疫沈降し質量分析で同定する実験系は立ち上がっている。そして、同定したリン酸化部位特異的抗体を作成し、リン酸化した新規Aurora基質の発現や局在を調べる。また、AuroraA,Bそれぞれに対する特異的阻害剤を用いて、AuroraA,Bどちらにリン酸化されるかを同定する。 また平成27年度に行った実験結果より、新規Aurora基質が紡錘体形成に関与することが示された。新規Aurora基質のリン酸化が染色体の整列に関与するか、紡錘体形成にも関与するかを調べる予定である。
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