2014 Fiscal Year Research-status Report
分子選択的創薬に向けたセロトニン受容体のX線結晶構造解析
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26840021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 香菜子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教務補佐員 (40726204)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒト膜蛋白質 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、セロトニン受容体(5-HT1BR)のアンタゴニスト(阻害剤)結合型の立体構造をX線結晶構造解析により決定することを目的としている。当該年度において申請者は主に以下の2点について検討を行った。 1) 大腸菌由来の可溶性タンパク質cytochrom b562RIL (bRIL)を受容体の細胞内リンカー部分に挿入することによって熱安定性および結晶のパッキングが向上することが知られており(Chun E. et al. 2012 Structure, 20 967-76)、申請者もこの手法を用いて安定な5-HT1BRの取得に成功している。当該年度はさらにこのリンカー部分のbRIL挿入位置を換えることにより、さらに分解能の高い結晶を得ることを目指した。リンカー部分を変えた3種類のコンストラクトを作製し、昆虫細胞sf9による発現、精製、結晶化を行った。その結果、全てのコンストラクトについて結晶を得ることに成功した。さらに発現量や結晶化の再現性が最も良いコンストラクトを選抜した。 2) 5-HT1BRに対する結合親和性を指標として4種類のアンタゴニストおよび1種類のアロステリックモジュレーター(アロステリックに5-HT1BRと結合してリガンドの親和性を向上させるペプチド)の計5種類の化合物を選抜し、共結晶化を行った。その結果、化合物5種類中3種類において結晶を得ることに成功した。このうち最も良かったもので4.5 Åまで分解能が向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画として、申請者は1. アンタゴニスト結合型結晶のスクリーニング、2. 熱安定化変異体の取得、3. X線回折実験によるスクリーニングの3点を掲げていた。実験は計画通りに進行しており、4種類のアンタゴニストおよび1種類のアロステリックモジュレーターから3種類のリガンドについて結晶を取得することに成功した。また、熱安定化に有効なbRIL挿入体について5-HT1Bとの連結部位であるリンカー部分を置換した変異体を3種類検討し、発現量、結晶化の再現性が最も高いコンストラクトを選抜した。取得した結晶について微小結晶の測定に適したSpring-8 BL32XUビームラインにおいてX線回折実験を行い、4.5 Å分解能の反射を確認した。本研究課題は申請時においてはアゴニスト結合型の結晶を取得できていたものの分解能は10 Å程度であった。平成26年度の研究実施で新たにアンタゴニスト結合型結晶を取得でき、分解能は4.5 Åまで向上したことから、当初の計画以上に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、3.5 Å分解能を超える結晶の取得を目指し、さらなる検討を行う。平成26年度においてコンストラクトの熱安定性の評価を行ったところ、熱安定化度の高いリガンド複合体を用いて結晶化した場合に最も分解能が良かったことから、引き続きこの評価を指標とし、さらなる分解能の向上を目指す。加えて、結晶化能の高いリガンドを選抜するために現在使用中のコンストラクトおよび新たに作製するコンストラクトとリガンドとの結合親和性を測定し、生化学解析結果に基づいて生理活性を保持しつつ結晶化能の高いコンストラクトを選定する。
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Causes of Carryover |
平成26年度はコンストラクトの構築や昆虫細胞の培養を効率的に行うため技術補佐員を4ヶ月間雇用した。平成27年度は培養、精製、結晶化の頻度が上がることが想定され、高額な試薬が大量に必要になるため、未使用分は次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は立体構造の決定を目指し、結晶化スクリーニングを中心に実験を行う予定である。昆虫細胞大量発現系に必要な培地、精製に必要な界面活性剤、結晶化に必要なモノオレインなど、高額な試薬が必要になるため、全経費の約8割を消耗品として使用予定である。旅費として32万円、論文作成時の英文構成費として10万円使用予定である。
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