2015 Fiscal Year Research-status Report
分子選択的創薬に向けたセロトニン受容体のX線結晶構造解析
Project/Area Number |
26840021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 香菜子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40726204)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒト膜タンパク質 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、セロトニン受容体(5-HT1BR)のアンタゴニスト(阻害剤)結合型の立体構造をX線結晶構造解析により決定し、分子選択的創薬に向けた知見を得ることを目的としている。 前年度、アンタゴニストの選定により結晶は得られたものの、構造解析には不十分であったことからコンストラクトの改変を試みた。現在のコンストラクトは大腸菌由来のbRILという可溶性蛋白質がTM5とTM6の間に挿入されており、ループ部分が置換されている。これを以下の3種類、bRIL挿入位置の変更、ケモカイン受容体の構造解析に用いられたRubredoxin (Tan et al. 2013 Science, 341, 1387-90)、オレキシン受容体の構造解析に用いられた超好熱古細菌由来酵素(PGS) (Yin et al. 2015 Nature, 519, 247-250)に変更した。その結果、PGS挿入体において精製標品の熱安定性が向上した。その結果、結晶化スクリーニングによって結晶を得ることができ、SPring-8にてX線回折実験を行い3.2 Å分解能の回折データを取得することができた。分子置換法によって位相を決定し、電子密度マップを取得することができた。現在、構造決定に向けた精密化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は構造決定に必要なデータの取得を行うことができ、位相決定もでき、予備的な立体構造解析ができているため、目的の達成は間近と考えおおむね順調であるとした。しかしながら、まだ精密化は終了しておらず、構造決定は未完了である。これは申請者が雇用されているプロジェクト研究が多忙であったためである。現在、精密化を行いながら、予備的に得られた立体構造を用いて先行研究で明らかにされたアゴニスト結合型構造との比較を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、構造の精密化を完了させ、立体構造を決定する。次いで、既に報告されているアゴニスト結合型の立体構造と比較した結果から、セロトニン受容体の薬剤に対する分子選択性を明らかにする。その後、機能選択性に重要だと考えられたアミノ酸に変異導入を行い、薬剤結合実験を行うことで生化学的な面からの整合性を確認する。得られた立体構造がin-silico解析に十分なものであれば分子選択的創薬に向けた新規薬剤のスクリーニングを行う。In-silicoスクリーニングは1種類のリガンド結合型構造からでも可能ではあるが、複数のリガンドとの複合体構造を用いることで精度は格段に向上する。そこで異なる特徴の構造を持つリガンドとの複合体の結晶構造の取得を目指して結晶化スクリーニングを行う。
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Causes of Carryover |
今年度は構造解析に十分な品質の回折データが収集でき電子密度マップが得られたが、申請者が雇用されているプロジェクト研究が多忙であったために構造決定が完了していない。従って消耗品などの使用も少なかったため、未使用分を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は得られた立体構造から重要だと考えられたアミノ酸残基を生化学実験によって特定するため、実験に必要な薬剤や放射性リガンド等の消耗品の購入に当てる計画である。加えて、異なるリガンドとの複合体の結晶構造を取得するため、昆虫細胞の培養、精製、結晶化スクリーニングに必要な試薬の購入に充てる。また、最終年度である次年度は研究成果をまとめ論文化を行い、学会発表等も積極的に行う予定であるため、論文化の際に必要な英文公正費10万円、学会発表に必要な旅費32万円を使用する予定である。
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