2015 Fiscal Year Research-status Report
再構成OPA1を用いたミトコンドリア内膜融合機構の解明
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26840026
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
伴 匡人 久留米大学, 分子生命科学研究所, 講師 (00579667)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 膜融合 / OPA1 / カルジオリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
OPA1はダイナミン様のGTP加水分解蛋白質(GTPase)であり、ミトコンドリアの機能発現に必須の現象であるミトコンドリア内膜融合や、特徴的な膜構造であるクリステ構造の形成に於いて中心的な役割を担っている。他のダイナミン様GTPaseと同様に、膜との結合、GTP加水分解によるエネルギーを使って、膜の形態制御に関わると考えられているが、膜上での挙動はほとんど明らかにされていない。平成27年度は、平成26年度の研究に於いて、発現・精製法を確立したリコンビナントL-OPA1と蛍光分光高度計を使ったin vitro膜融合アッセイ及び、磁性ビーズを用いた結合アッセイを行い、L-OPA1の機能解析を行った。 結合アッセイの結果から、L-OPA1とミトコンドリア内膜に局在する脂質カルジオリピン(CL)間の特異的な結合は、内膜の主要な脂質であるフォスファチジルエタノールアミン(PE)存在下で促進されることから、他の内膜蛋白質の安定化にも寄与するCL/PEからなるマクロドメイン構造が、L-OPA1との結合にも寄与することが示唆された。異なるアシル鎖構造を持つCLを使った実験から、L-OPA1とCL間の特異的な相互作用は、CLの電荷を持つ親水部位ではなく、アシル鎖構造が寄与することが明らかになった。 さらに、異なる膜に存在するL-OPA1間のトランスオリゴマー形成は、GTP加水分解非依存的に起こることが分かった。トランスオリゴマーが形成は、膜融合の促進ではなく阻害をもたらすことから、このトランスオリゴマー形成は、融合ではなくミトコンドリア内でのOPA1の重要な役割の一つであるクリステ構造の形成に関与することが示唆された。 これらの結果から、L-OPA1がミトコンドリア内でもたらす機能には、時空間により厳密に制御された脂質やL-OPA1の分布が大きく寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
確立したin vitro膜融合及びリポソーム結合アッセイを用いた解析から、内膜融合の制御やクリステ構造の形成などのミトコンドリアの機能に重要な役割を持つOPA1機能発現の分子機構を理解するための重要な知見を得ることができたので、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。一方、ミトコンドリア内でのOPA1の発現には、OPA1間やCL間の相互作用が重要であるが、それらをより明確にするためには、OPA1のどの部位がどのように寄与するかを明らかにする必要がある。現在、OPA1の各ドメインに変異体を導入し、変異体の影響を解析しているが、変異体の発現・精製に手間取っており、これらについては十分な結果を得られていない。また平成27年度中に予定していた研究成果の学術論文への投稿がまだ達成されていない
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果の学術論文への投稿・出版を完了させ、研究成果の発信を行う。 OPA1は、通常のミトコンドリア内において、膜貫通領域を持つL-OPA1と、膜貫通領域が分解酵素により切断されたS-OPA1の両フォームで存在している。ミトコンドリア内膜融合に於いては、これらの両フォームがどのように内膜融合に寄与するか?ついてしばしば議論が分かれている。今後は、これまでに確立した膜融合及び結合アッセイにS-OPA1を加えて、両フォームの役割を明らかにしたい。また現在、手間取っている変異体の発現・精製の改善を行い、ミトコンドリア機能にもたらすOPA1の挙動をより明確なものにしたいと考えている。さらに確立した実験システムを、ミトコンドリア外膜の融合因子の発現・精製にも応用し、ミトコンドリア膜融合システムを網羅的に解析する実験系の確立を目的とした研究も継続したい。
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Causes of Carryover |
平成28年度は「現在までの達成度」に記述した蛋白質変異体の発現・精製や、「今後の研究の推進方策」に記述した、実験計画にある「ミトコンドリア膜融合システムを網羅的に解析する実験系の確立」のための研究を行う予定である。これらの実験系の確立には、界面活性剤の濃度や種類などの条件検討が必要となるために、平成27年度よりも多くの消耗品等の購入が予想されるので、繰越を行った。また平成28年度中の研究成果の学術論文への投稿を考えており、その費用への使用のために、繰越を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度中の、研究成果の学術論文への投稿を考えており、これまでの繰越金は、論文への投稿や出版に関わる費用に使用する。また採択までの過程で求められることが多い追加実験や、協力研究者らとの情報交換のための研究打ち合わせ旅費などにも利用する。また研究目的の達成のために、用いる界面活性剤の濃度や種類を変えるなど、より多くの条件を検討する際にも使用する。さらに得られた結果に応じて、精製度の高い蛋白質が必要となった場合は、クロマトグラフィーシステムなどの備品購入に使用する。
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