2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26840056
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
原田 隆平 筑波大学, 筑波大学計算科学研究センター, 研究員 (60612174)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンパク質 / 分子動力学シミュレーション / 立体構造変化 / フォールディング / 構造サンプリング / 機能発現 / 超並列シミュレーション / 自由エネルギー地形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 生体分子の分子動力学シミュレーションに基づき, タンパク質構造揺らぎを利用した効率的構造サンプリング手法を提案する. 初年度は, タンパク質の異方的構造揺らぎを効率的に利用した "Fluctuation Flooding Mehtod (FFM)" と呼ばれるタンパク質構造変化サンプリング手法を提案した. (J. Chem. Phys., 140, 125103, (2014), R. Harada, Y. Takano, and Y. Shigeta). タンパク質の異方的構造揺らぎは, 機能発現に重要とされている. タンパク質の大規模立体構造変化に伴う異方的構造揺らぎを特徴付ける解析手法として, 主成分分析が広く用いられている. FFMでは, 主成分分析を利用することにより, タンパク質の異方的構造揺らぎを抽出し, 機能発現に関係する異方的構造揺らぎを積極的に促進することで, 通常の分子動力学シミュレーションでは抽出することが困難である大規模構造変化を再現する. FFMの計算手順は, 下記の3つのプロセスから成る. (1)タンパク質の分子動力学シミュレーションにより得られた原子座標トラジェクトリを主成分分析により解析し, 異方的構造揺らぎ(振動モード)を抽出. (2)抽出した異方的振動モードに対して, 大きく揺らいでいるタンパク質構造を構造変化を誘起する確率が高い候補構造としてストック. (3)ストックした候補構造を初期構造として, 初期速度再分配による短時間MDシミュレーションをリスタートさせることにより構造リサンプリングを実行し, 構造遷移を促進. 上記のプロセスを繰り返すことにより, タンパク質の異方的構造揺らぎを取り込むことが可能となり, 外力などの外部摂動を加えることなく, 比較的単純な計算手順により, 効率的にタンパク質の大規模立体構造変化を抽出することが出来る.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の早い段階において, タンパク質の構造サンプリング手法 (FFM, J. Chem. Phys., 140, 125103, (2014), R. Harada, Y. Takano, and Y. Shigeta) を確立することが出来たので, 次年度に余裕を持ってアプリケーションに移行することが可能となった. FFMの計算効率の検証として既に, 加水分解酵素であるT4Lリゾチームのopen-closed構造変化に適用し, 安定構造間の構造遷移過程を抽出済みである. 更に, FFMとアンブレラサンプリングおよび多重ヒストグラム法の併用により, open-closed構造変化に関わる自由エネルギー地形も計算済みであり, 構造転移に伴う自由エネルギー障壁も見積もること出来た. T4Lのopen-closed構造変化は, 通常の分子動力学シミュレーションを1マイクロ秒実行しても抽出困難な生物学的レアイベントである. これに対しFFMは, ナノ秒オーダーの計算コストで上記の遷移過程を抽出することが可能であり, FFMのタンパク質構造サンプリングにおける計算効率の高さを示すことが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度においてFFMの計算効率を検証することができたので, 次年度は実際のアプリケーションに移行する. 興味のある対象としては, グルタミン酸結合タンパク質の分子認識問題や, ナイロン分解酵素のリガンド結合過程解明などのタンパク質の複合体に適用し, 通常の分子動力学シミュレーションでは解明することが困難である研究課題に挑戦し, 計算結果をまとめて論文投稿する.
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Causes of Carryover |
初年度未使用額として703,760円が生じたが, これは海外学会発表旅費として消費することができなかったことが理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は当該研究費と平成27年度の研究費を合わせて, 国内学会, 海外学会の参加費および旅費に使用する. また, シミュレーションで得られたデータを保存するためのハードディスクを購入する.
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