Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の構造揺らぎを効率的に利用した構造変化予測法開発し, 実際のタンパク質フォールディングシミュレーションに適用した. 具体的には, 構造変化に重要なタンパク質の構造揺らぎは, 出現確率の小さい状態から引き起こされることに注目した. これら出現確率の小さい状態は, タンパク質構造空間においてスパースな分布に対応しており, 情報科学的には「はずれ値(Outlier)」に対応している. 本研究において, 機能に重要なタンパク質構造変化を計算機上に効率的に再現するためには, これら「はずれ値」から構造リサンプリングすることが重要であることが分かった. 上記の考察から, タンパク質状態分布の「はずれ値」検出に基づく構造変化予測法である"Outlier FLOODing (OFLOOD) 法"を提案した. (J.Comput.Chem.,30,97-102 (2015)) 計算効率の検証として, 本手法をタンパク質天然構造予測シミュレーションに適用したところ, 複数のターゲットに関してナノ秒のオーダーで最安定構造(天然構造)予測に成功した. 従来のタンパク質フォールディングシミュレーションでは, 天然構造をサンプルするためには少なくともマイクロ秒オーダーの計算時間が必要であったが, OFLOOD法を用いることによりナノ秒オーダーの計算コストに抑えることが出来ることが分かった. 特に, ミニタンパク質"Villin"に関しては, 主フォールディング経路に加えて, 副フォールディング経路の検出に成功した. これらのフォールディング経路は, 従来法では検出困難であり, OFLOOD法の有用性を示す計算結果となった. OFLOOD法の他にも, 様々なタンパク質構造サンプリング法を開発した. 開発した手法のレビューとして, Phys.Chem.Chem.Phys.誌より, "feature article"として招待執筆の依頼を受けた. (Phys.Chem.Chem.Phys.,17,6155-6173 (2015)).
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