2014 Fiscal Year Research-status Report
個々の要素分子の動態を同時計測して生体分子システムの動作原理を探る
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26840057
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
市村 垂生 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (50600748)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生物物理 / 一分子計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質ナノマシンの個々の部品の動態を同時観察することを目指して、波長分離型の超解像顕微鏡システムの構築に取り組んだ。並進モータータンパク質であるミオシン5およびミオシン6のモデル試料を用いて、動態計測を行った結果、アクチンフィラメント上のナノメートルスケール内で複数のミオシンが移動する様子を観察することができた。同時に4つのミオシンを計測することにも成功している。また、本手法で達成しうる位置推定精度を実験的に評価した。この結果、現状の装置システムにおいて、10msの時間分解能で最高で4nm、30msの時間分解能で3nm程度の位置推定精度(標準偏差)での一分子動態計測が可能であることを示した。これは、通常の一分子計測の精度とほぼ同程度であり、従来の位置推定精度を持って、複数の分子を同時に動態計測できる。 実験と並行して、蛍光スポットの中心位置推定アルゴリズムについても検討した。現在のところ、楕円ガウス関数のフィッティングにより位置推定を行っているが、スペクトル波形がガウス形状でないため、スポット形状は厳密には楕円にならない。スポット形状が楕円でない場合に、達成しうる位置推定精度を数値シミュレーションにより調べ、楕円ガウスフィッティングの適用範囲を議論している。この結果、比較的短波長の量子ドットプローブでは、楕円ガウスフィットで問題ないが、長波長の量子ドットプローブではスペクトル形状がガウス形状からかけ離れるので、スポット位置推定もスペクトル形状を考慮した関数を用意する必要があることがわかった。 また、分光計測における蛍光スポットの結像特性について議論するなど、理論体系の構築にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、初年度は装置システムの構築、ミオシンを用いたデモンストレーション実験、および位置推定精度の実験的評価に取り組んだ。数値目標は完全には達成していないが、今後の装置の最適化により十分達成可能であると言える。さらに、二年目に計画していた複数分子の同時計測にも取り組み、可能であることを示すに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
本手法を用いた応用研究を推進する。計画書に記載した通り、筋肉ミオシンであるミオシン2をターゲットとして、ミオシンフィラメント内でのミオシンヘッドの協同的動作を調べる。さらに、力計測機構を導入し、フィラメント全体で発生する力を計測をしながら、個々の分子の動態を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度に、力計測機構のためのガルバノスキャナーを購入するための金額を残したかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
備品としては、上記ガルバノスキャナー(およそ50万円)を購入予定。
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Research Products
(5 results)