細胞分裂のミクロ力学：分裂後期紡錘体の構造と機能の力学計測

2015 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 26840071
• Research Institution: National Institute of Genetics
• Principal Investigator: 高木 潤 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特任研究員 (40632196)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: 細胞分裂 / 紡錘体

Outline of Annual Research Achievements

生体内構造物の力学的性質は、その構造物の生物学的機能にうまく利用されている。本研究の目的は、細胞分裂時に染色体分配を担う、紡錘体と呼ばれる構造物の力学的性質が、染色体分配にどのように利用されているかを知ることにある。とくに、分裂中期から分裂後期にかけての紡錘体の力学特性のどのような変化が、分裂後期における紡錘体の伸長と、姉妹染色体の分離促進に寄与しているのかを調べる。
本年度は、紡錘体の伸長方向に沿った外力の負荷に対する、紡錘体の変形応答の詳細な解析と、紡錘体の伸長方向の力学特性に関わる分子の同定を行った。その結果、観察された紡錘体の変形応答は、紡錘体極と染色体とを1本の微小管がつないでいるという従来からのモデルでは説明できず、紡錘体微小管の高解像度観察による近年の研究成果から提示されている、紡錘体極と染色体は複数の束ねられた短い微小管によってつながれているというモデルを支持する結果となった。本結果は、高い正確性が必要とされる染色体分配機構が、力学的に柔らかい構造によって担われているという点で、興味深いものである。また、この観察された変形応答の分子メカニズムについて、キネシン５と呼ばれる2本の異なる微小管同士をクロスリンクする分子の寄与を明らかにするために、キネシン5の機能阻害剤を用いて実験を行っている。本研究成果は、分子メカニズムの解明が終了した後、学会及び国際的論文誌での発表を行う予定である。