2014 Fiscal Year Research-status Report
光刺激によるクラゲ卵成熟誘起神経ペプチドの合成・蓄積・放出動態の解明
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26840073
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹田 典代 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (40433742)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 卵成熟 |
Outline of Annual Research Achievements |
刺胞動物ヒドロ虫綱に属すクラゲClytia hemisphaelicaは光環境の変化で(暗状態から明状態)卵成熟を開始し放卵にいたる。本研究ではClytiaクラゲを用いて卵成熟誘起ホルモンに関する研究を行った。Clytia hemisphaelicaのトランスクリプトームから神経ペプチド前駆体をBlastサーチおよびモチーフ検索を組み合わせて検索したところ、少なくとも6つの候補遺伝子が見つかった。これらが卵巣に発現しているかどうかを、qPCR法で確認したところ、2つの遺伝子が卵巣に発現している事が明らかになった。In situ 解析により、この2つの遺伝子は卵巣上皮細胞に点在している事が確認された。 次に、この神経ペプチド前駆体から合成されることが予想されるペプチドを6種類人工合成し、卵母細胞に投与した所、ペプチドAおよびペプチドPにおいて非常に低濃でも卵成熟を引き起こす事が明らかになった。これらのペプチドが神経ペプチドであるかどうかを確認するため、ペプチドPおよびペプチドAに対する抗体を作成し、免疫組織科学を行った結果、ペプチドAおよびペプチドPポジティブ細胞は、卵巣の外胚葉上皮細胞に散在神経細胞様に点在することが明らかとなった。また、二重染色の結果から、ペプチドAおよびPはほぼ同一神経細胞に発現している事が分かった。 Clytiaクラゲにおいて、実際の卵成熟時にペプチドAおよびペプチドPが卵成熟誘起物質として働いているかどうかを明らかにするため、抗体を用いた阻害実験を行った。その結果、ペプチドPを阻害した場合のみ卵成熟が阻害される事が明らかとなり、Clytiaクラゲ卵成熟誘起物質は神経ペプチドPである事が強く示された。本研究の成果は、動物の卵成熟開始機構の「進化」や「原型」を理解する上で、大きな学術的意義を持つと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)Clytia トランスクリプトームを用いて、Clytiaクラゲ卵巣に発現する神経ペプチド前駆体遺伝子を特定することが出来た。 (2)神経ペプチド前駆体遺伝子から、卵成熟誘起ホルモン候補ペプチドを抽出する事ができた。 (3)卵成熟誘起ホルモン候補ペプチドのうち、ペプチドPが生体内で実際に卵成熟誘起ホルモンとして働いていることを示す事ができた。 (4)Clytiaクラゲの卵成熟誘起ホルモンは神経ペプチドである事を示す事ができた。 以上の結果から、本研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Clytiaクラゲは光状態の変化(暗状態から明状態)に応じて、毎日(24時間周期)一度放卵を行う。この仕組みを解明するため、今後は、Clytiaクラゲ卵成熟誘起ホルモンである神経ペプチドPに着目し以下の解析を行う。 (1)生理実験と免疫組織化学を組み合わせ、神経ペプチドPの放出のタイミングを特定する。 (2)免疫組織化学により、神経ペプチドPの蓄積のタイミングを特定する。 (3)放卵した後、いつから光刺激に応じて神経ペプチドPを放出する事ができるのか?生理実験と免疫組織化学を組み合わせ検討する。
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Causes of Carryover |
共焦点顕微鏡を利用するため、仙台への出張を3回予定していたが、実験の準備状況から、実際に行ったのは1回だったため、旅費の使用額が減った。それに伴い、謝金、物品の輸送などが減ったため、その他の使用額も減った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、当初の予定通り研究費を使用する。また、昨年度予定していた出張を遂行する。
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Research Products
(5 results)