2015 Fiscal Year Annual Research Report
光刺激によるクラゲ卵成熟誘起神経ペプチドの合成・蓄積・放出動態の解明
Project/Area Number |
26840073
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹田 典代 東北大学, 生命科学研究科, 助教(研究特任) (40433742)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 卵成熟誘起ホルモン / 刺胞動物 / クラゲ / 神経ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
クラゲなどの刺胞動物は動物界において原始的な神経系を有すると考えられている。クラゲの卵成熟誘起ホルモンは、神経伝達物質そのものであることが分かりつつあり、卵成熟誘起ホルモンおおよび神経系の「原型」や「進化」を考える上で重要である。 本研究で扱う刺胞動物ヒドロ虫綱のClytiaクラゲは光状態の変化(暗状態から明状態)に応じて毎日、卵成熟を開始し放卵に至る。本年度の研究では、Clytiaクラゲ卵成熟誘起ホルモン(神経ペプチドP)の放出のタイミングおよび蓄積のタイミングを、生理実験と免疫組織化学を組み合わせて明らかにする事を目指した。まず、神経ペプチドPに対する抗体を作成したところ、非常に特異性の高い抗体を作成する事ができ、免疫組織化学に有用である事が分かった。この抗体を用いて免疫組織化学を行う事により、卵成熟開始前の卵巣では、神経ペプチドPは卵巣上皮細胞に網目状に(散在神経様)に張り巡らされている事が分かった。このシグナルは卵成熟開始刺激である光刺激を与えると、約45分後にはほぼ検出されなかった。神経ペプチドPは光刺激後にペプチドP神経から放出される事が予測され、このタイミングは卵成熟開始時と一致する事が明らかになった。次に、一度放出されたペプチドPが次回の放卵までに再度蓄積されるかどうかを調べたところ、前回の放卵から約6時間経過した卵巣では弱いシグナルが得られ、約18時間経過した卵巣は、放卵直前の卵巣のシグナルとほぼ同程度の強度のシグナルが得られた。以上の結果から、クラゲ卵成熟誘起ホルモンである神経ペプチドPは、光刺激により放出され、その後徐々にペプチドP神経に蓄積され翌日の放卵までには蓄積が完了する事が明らかになった。本研究により、毎日の放卵を可能にしているクラゲの卵成熟誘起ホルモン放出機構を解明していく上で、重要な基礎データが得られたと考えている。
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