2014 Fiscal Year Research-status Report
光受容体が介するステロイドホルモン生合成調節機構の解明
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26840074
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
島田 裕子 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(RPD) (30722699)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光受容体 / キイロショウジョウバエ / ロドプシン2 / Rh2 / エクジステロイド / ステロイドホルモン / 前胸腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの多細胞生物は、「こども(幼若期)」から「おとな(成熟期)」へ至る過程で外部形態や生理状態を劇的に変化させる。例えば、ヒトの第2次性徴や昆虫の変態が挙げられる。こうした発育プログラムの進行を司るステロイドホルモンの生合成は、器官や体サイズ等の内的要因、あるいは栄養・温度・光周期などの外的要因に応じて適応的に調節される。しかしながら、いつ、どのくらいの量のステロイドホルモンを生合成させるのかを決定する分子機構には未だ不明な点が多い。 本研究では、キイロショウジョウバエを用いて、光受容体の1つであるロドプシン2がステロイドホルモン生合成器官でシグナル伝達を行う可能性を検証し、ホルモン生合成との関連を明らかにすることを目指す。本研究により、視細胞以外での光受容体の新たな機能を発掘するとともに、多様な外環境に柔軟に応答するステロイドホルモン生合成調節機構の本質に迫る。 平成26年度においては、ロドプシン2ノックアウト変異体の発育を解析した。ノックアウト個体が蛹になるタイミングはコントロール個体より1-2日程度遅れることがわかった。ただ、このノックアウト蛹のサイズは、コントロールと差はほとんどなく、従来知られているエクジステロイド生合成不全の蛹の表現型(サイズが大きい)とは異なっていた。そこで、蛹化のタイミングの遅れがエクジステロイド生合成不全に依るかどうかを調べるために、ノックアウト個体に活性型エクジソンを摂食させたところ、蛹化のタイミングの遅れはレスキューされなかった。同様に、ロドプシンを介するシグナル伝達経路の因子であるホスホリパーゼCの変異体 norpA の表現型も、活性型エクジソン摂食でレスキューされなかった。以上の結果から、ロドプシン2変異体で見られた蛹化タイミングの遅れは、エクジステロイド生合成不全に依るものではないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、光受容体であるロドプシン2がショウジョウバエのステロイドホルモン生合成に関与することを追究しようとしていたが、実験の結果はこの仮説に否定するものだった。その点において真摯に受け止めるとするならば、研究の達成度はやや遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
この1年間で、本研究員は、ロドプシン2ノックアウト系統のバッククロスを行って系統を樹立し、また、ロドプシン2のプロモーター領域にGFPマーカーをつけることで、ロドプシン2の発現部位をラベルできる系統を樹立した。ロドプシン2のさらなる機能解析ツールを作製することができたので、今年度は、ステロイドホルモン生合成過程にこだわらず、発育過程全般についてロドプシン2の役割を追究していきたいと考えている。特に、所属研究室で整備されたリズム測定器を用いて、ロドプシン2ノックアウト個体の生理状態を解析する予定である。
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