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2014 Fiscal Year Research-status Report

転写因子CDX2を誘導可能なヒトES細胞を用いて腸管上皮細胞を誘導する

Research Project

Project/Area Number 26840083
Research InstitutionKeio University

Principal Investigator

中武 悠樹  慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20415251)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2016-03-31
Keywords分化誘導 / 小腸上皮細胞
Outline of Annual Research Achievements

ヒト腸管発生の分子メカニズムを正しく理解し、細胞分化を制御するためには、逆遺伝学的アプローチが必須となるが、遺伝子操作と培養環境操作を組み合わすことは一般には困難なため、多くがブラックボックスのままである。本研究は、転写因子CDX2を誘導できるヒトおよびマウス多能性幹細胞株を用い、腸管上皮細胞を誘導することを目的とした。所属機関内で開発された内在性のヒトおよびマウス腸管上皮細胞の初代培養をもちいた。これらの腸管上皮細胞に特化した培養条件下で、幹細胞に転写因子CDX2を誘導することによって、高効率な分化誘導を期待した。既に実施済みのトランスクリプトーム解析の情報から、CDX2の標的・協調因子群を同定しており、それらの誘導株においても同様の検討を行った。ヒト腸管上皮細胞の試験管内誘導系を構築することで、ヒト腸管発生に対して、逆遺伝学的アプローチによる解析を目指した。

平成26年度の計画は、ヒトCDX2を誘導した状態で、ヒトES細胞からの腸管上皮誘導法を試行する事であった。当初の計画通りに試行したところ、浮遊した3次元構造が得られたものの、CDX2誘導によって3次元構造が増えたとは判断できなかった。逆に、構造自体は減少する傾向が観察された。免疫染色により分化マーカーの発現を解析したところ、遺伝子誘導自体は十分にCDX2の発現量が確保されていたものの、予想とは異なり、小腸上皮細胞への分化は抑制される結果が得られている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

申請者の先行研究において、樹立したヒトCDX2発現誘導株は、野生型とは異なる細胞形態を有し、腸管に特異的な遺伝子群(KLF5,TMEM35, GSN, PALLD)発現が上昇することが明らかとなっていた。さらに、Cdx2は、マウスにおいては胎生期初期の腸管形成時から成体まで一貫して腸管上皮に強く発現し、Cdx2欠損マウスはCrypt形成不全により、小腸の形成不全が生じる。ヒトにおいてもCDX2は消化管上皮に強く発現し、CDX2変異は小腸、食道、胃、大腸など消化管がんに強く関連する。以上を考え合わせると、CDX2を誘導した細胞は、小腸上皮細胞などの消化管組織構造になり易いと考えられ、本研究で検討した。
しかし、CDX2遺伝子を誘導したヒトES細胞をもちいて、実験をおこなったところ、予想とは逆に消化管組織様構造の減少が観察された。並行しているプロジェクトによるトランスクリプトーム解析の結果、CDX2誘導株は神経細胞系譜と相関があることが判明した。同様のアプローチにより解析すると、下流遺伝子と想定していたNEUROG3も神経細胞系譜との高い相関を示し、想定していた遺伝子セットが、神経細胞様の細胞分化を示すことが明らかとなってきた。
一方、CDX2の誘導時期と、誘導量については検討の余地がある。申請者の開発した細胞株は、TET-ONシステムによる薬剤誘導系であるため、薬剤の添加時期および量を、より詳細に検討すべきである。ES細胞からの腸管上皮を誘導する際、培養系は原始内胚葉、胚体内胚葉、前腸内胚葉細胞と遷移するが、遺伝子誘導のウィンドウを絞りきったとはいえず、CDX2誘導が効果的な分化状態が特定できていない。組み合わせが膨大となるが、遺伝子の誘導量、誘導時期の最適化をおこなう必要性がある。

Strategy for Future Research Activity

研究計画と結果は異なるが、実験系は順調に構築できており、並行している実験から新知見が大量に得られている。このため、現行の実験条件を検討するとともに、計画変更を検討している。
一つは、標的細胞系譜を小腸上皮から神経細胞へと変更することである。申請時においても、NEUROG3誘導株が、未分化状態を維持する培地内で、神経細胞様へと分化することを確認していた。NEUROG3は、内分泌細胞系譜においても機能することが知られ、小腸上皮細胞誘導実験系においても、後期の分泌細胞出現時期に発現することが報告されている。このため、ES細胞を一度腸管上皮様細胞へと分化させてから、NEUROG3を誘導し、分泌細胞の増減を検討した。しかし、NEUROG3誘導株は神経様細胞へと分化した。これらを考え合わせると、計画時に用意していた転写因子セットを用いて、神経細胞を誘導することは容易であると考えられる。成体におけるCDX2の発現は、小腸上皮に強いものの、視床下部、脳梁、海馬などの神経系譜に発現することが報告されており、申請者らの解析においても、これらの神経組織と相同性が高いことが明らかとなってきた。これらの事実は予想していなかったが、結果として論理的に妥当な新知見を得たと考えている。これらの知見をまとめ、現在論文を執筆しており、近く投稿する予定である。
さらに、並行するプロジェクトから小腸上皮細胞への分化が促進できる新たな転写因子を選別しなおすことも可能である。現在、並行するCRESTプロジェクトにおいて、400転写因子ほどの薬剤誘導株を作製しており、網羅的な発現解析を行っている。これらの中から、小腸と相関が高いものを選別することが可能である。現在、参照するデータセットを吟味しており、作業が終わり次第、試行する。昨年度に構築した実験系を活用できるため、迅速な検討が可能だろう。

Causes of Carryover

未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。

Expenditure Plan for Carryover Budget

実験試薬等

  • Research Products

    (1 results)

All 2014

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] Effect of CDX2 overexpression in human ES cell2014

    • Author(s)
      Yuhki Nakatake、Mayumi Oda、Minoru Ko
    • Organizer
      CHIR-JST meeting
    • Place of Presentation
      オタワ(カナダ)
    • Year and Date
      2014-10-26

URL: 

Published: 2016-06-01  

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