2015 Fiscal Year Research-status Report
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26840085
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
瓜生 耕一郎 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (90726241)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 数理モデル / 画像解析 / 同期 / 時間スケール / シミュレーション / トラッキング / 遺伝子発現リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は細胞集団の運動が遺伝子発現ダイナミクスに与える影響を調べるため、ゼブラフィッシュ体節形成過程で観察される細胞移動の定量化とその数理モデリング、そして細胞移動が遺伝子発現リズムの同期に与える影響について解析を行った。我々は先行研究において細胞移動の時間スケールが十分に速い場合、移動が遺伝子発現リズムの同期を促進することを報告した。しかし実際の組織におけるこの二つの時間スケールの比較は行われていなかった。これを調べるために、組織のイメージングデータを画像解析し、細胞を自動でトラッキングすることにより細胞移動の定量化を行った。はじめに人工的に合成した画像とゼブラフィッシュキメラ胚の画像を使いトラッキングアルゴリズムを最適化した。細胞の速度ベクトルの空間微分を計算することで隣接している細胞間の相対的な動きを定量化し、未分節中胚葉組織の後方で相対的な位置変化が頻繁に起きていることを明らかにした。さらに隣接細胞間の距離の時間変化を計測することで、細胞の移動は単純なランダムウォークではないことを見出した。次に細胞集団の運動を細胞間に働く力や細胞の自発的な動きを記述することで数理モデル化し、得られた実験データに近似ベイズ計算を適用しフィッティングすることで細胞の移動パターンをコンピュータ上で再現することに成功した。再現した移動パターンのもとでリズムの同期過程を数値シミュレーションにより調べたところ、再現された移動はリズム同期を促進することがわかった。この結果は、生体組織における細胞移動の時間スケールは遺伝子発現ダイナミクスの時間スケールよりも十分に速く、リズムに対して強く影響を及ぼしていることを示唆している。解析結果を論文にまとめ、投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はイメージングデータと数理モデルの間を繋げる手法を確立することができた。この手法を使うことで、細胞移動の画像データをもとにして数理モデルを構築することができ、実験にフィードバックすることがより容易になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、発生組織で観察される細胞の協調的移動を数理モデル化していく。特にイメージングデータに基づいた数理モデリングを行い、今年度確立した手法をさらに発展させる。実験データに対してモデルをフィッティングすることで組織での力学パラメタ等を定量化し、対立仮説の検証を行っていく。
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Causes of Carryover |
今年度、当該予算を使いアルゼンチンに渡航しブエノスアイレス大学の共同研究者と研究打ち合わせ・論文執筆を行う予定であったが、所属研究機関の海外渡航援助を得ることができそれを渡航費用と滞在費に当てることができたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外研究機関の共同研究者との研究打ち合わせ・論文執筆のための渡航費用と滞在費に当てる予定である。より長く滞在し綿密に議論することで、研究が飛躍的に進むと期待できる。また研究成果を国際・国内学会で発表するための旅費として使用することを予定している。
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Research Products
(7 results)