2015 Fiscal Year Research-status Report
植物細胞分裂を制御する新奇蛋白質リン酸化酵素と脱リン酸化酵素の単離と機能解析
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26840086
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
笹部 美知子 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00454380)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞分裂 / 紡錘体 / フラグモプラスト / 微小管 / MAPキナーゼ / CDK / プロテインホスファターゼ / プロテインキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の細胞質分裂は、特定のMAPKカスケードの活性化により開始されるが、この経路の活性化はサイクリン依存性キナーゼ(CDK)によって、特定の時期までは負に制御されている。この経路の上流の制御系の解明を目指して、CDKによる負の制御を解除する因子の探索と候補因子の機能解析を進めた。これまでに我々は、酵母2ハイブリッドスクリーニングにより、CDKによるNACK1のリン酸化を解除するプロテインホスファターゼの候補、NACK1-associated protein phosphatase type 2C (NA2C) を単離している。本研究では、シロイヌナズナゲノム中に存在する2つのNA2CホモログAtNA2C1及びAtNA2C2に着目し解析を行った。レポーター遺伝子を用いた発現解析により、AtNA2C1遺伝子が側根特異的に発現していること、AtNA2C2遺伝子は、根端分裂組織や茎頂分裂組織等で、分裂な盛んな組織で発現レベルが高いことが分かった。AtNA2C2遺伝子の過剰発現体では、野生型植物と比較して植物体が大きくなり、主根が長くなった。過剰発現体において成長が促進された根において細胞数、及び細胞サイズについて統計的な解析を行ったところ、過剰発現体では分裂領域が広がり、分裂細胞が増加していることがわかった。このことから、AtNA2C2及びAtNA2C1遺伝子の異所的過剰発現は、細胞分裂を促進することが示唆され、本因子が細胞分裂を正に制御する新奇プロテインホスファターゼとして機能している可能性が示唆された。 また、本年度はin silico解析により新規M期キナーゼの探索を進め、細胞分裂装置に局在する新規M期キナーゼ関連因子の候補を3種類得ることができた。これら因子はM期に特異的に発現が上昇することを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、植物の細胞分裂に関わる新奇制御因子を同定し、細胞分裂の進行を制御する分子機構の解明を目指している。本年度は、昨年度までに同定し解析を進めていたプロテインホスファターゼの生物学的機能を新たに明らかにすることができた。さらに、データベースを用いた解析より、新規なM期進行の制御因子の候補因子を得ることができたことから、研究はおおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに植物の細胞分裂に関わる新奇制御因子の候補として単離した、PP2C様ホスファターゼの個体レベルでの解析を進め、その分子機能の一端を明らかにすることができた。今後、生化学的性質を解析すると同時に、変異体もしくはノックダウン株の解析を進め細胞分裂における分子機能を明らかにする予定である。 また、新規にM期を制御する因子の候補として同定したプロテインキナーゼ及びその関連因子について、変異体、過剰発現体を用いた遺伝学的解析を進め、分裂時の機能及び個体における機能を明らかにする。また、キナーゼについては、生化学的な手法により基質の同定を進めることを計画している。
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Causes of Carryover |
研究は予定通り進行したが、参加を予定していた国際学会に諸事情により参加できなかったため、予定より旅費が削減された。このため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該研究費並びに翌年度以降に請求する研究費と合わせた研究費を用いて、植物の育成培地及び、遺伝子発現解析やRI実験、その他の生化学実験に必要な消耗品を必要量購入する予定である。また、本年度は論文発表を予定しており、学会参加旅費に加えて、英文校閲費、および論文発表必要経費を合わせて約30万円の支出を考えており、それらを合わせて約151万円となる予定である。
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Research Products
(9 results)