2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26840109
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
濱中 良隆 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (10647572)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 昆虫 / 学習 / ドーパミン / 免疫染色 / 細胞内電位記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、『記憶・学習の神経基盤解明の一端』として位置づけられる。具体的には、昆虫の匂い学習系を用いる。昆虫の学習過程は 『Mizunami-Unoki モデル』により説明される。このモデルは、これまで無脊椎動物と哺乳類の両方で知られてきた学習過程の要素を同時に含んでおり、『昆虫の学習が既知の学習過程では説明できない新規の学習過程である』ことを強く示唆している。ゴキブリでは、Mizunami-Unoki モデルの核を担う神経領域がキノコ体の『垂直葉』であることがわかってきた。私は、学習に伴った垂直葉のニューロンの活動変化を解析し、そのダイナミックな変化を単一細胞レベルで明らかにする。学習には、罰と報酬の2種類があり、罰学習には、『ドーパミン(DA)』が深く関わる。私はこれまでに、キノコ体の『傘部』近傍に細胞体を持つDAニューロンが垂直葉に投射することを明らかにした(浜中ら、投稿準備中)。以上の背景から、私はまず、罰学習の系で記憶・学習の神経基盤の解明に着手した。現在、垂直葉の外来性ニューロンの匂い応答性と投射形態の解析は順調に進んでいる。実験の結果、外来性ニューロンはi) 匂いに応答するタイプとii) 応答しないタイプの2つに大別されることがわかってきた。学習に関わるニューロンは匂いをコードする『キノコ体内因性ニューロン(ケニオン細胞)』と『キノコ体出力ニューロン』、両者のシナプス結合を修飾すると考えられ、Mizunami-Unokiモデルもモデルの核を担うDAニューロンを『入力ニューロン』として位置づけている。今のところ、一番のターゲットであるDAニューロンからの記録は未だ成功していない。本研究は、Mizunami-Unokiモデルを単一ニューロンの活動レベルで検証するものである。その独創性と学術的意義を考慮すれば、現在直面している困難を乗り越え、この研究を推進していく意義は極めて高い。
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