2015 Fiscal Year Research-status Report
キスペプチン神経系によるイソトシン・バソトシンニューロンの直接間接制御機構の解明
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26840111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神田 真司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50634284)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Ca2+イメージング / 免疫組織化学 / トランスジェニック / メダカ |
Outline of Annual Research Achievements |
キスペプチン神経系によってイソトシン/バソトシン神経系が制御されうることが形態学的にわかっており、前年度までに確立したカルシウムイメージングの方法を用いて、Kiss2ペプチドのバソトシンニューロンに対する作用をさらに深く解析した。神経入力を遮断するテトロドトキシンを用いて実験を行ったところ、キスペプチンがバソトシンに直接的に働いているという、形態学的根拠と一致する結果を得た。加えて、各種ブロッカーを用い、このキスペプチンによるバソトシンニューロンの賦活に関与するチャネルの解析も行うことができた。さらに、バソトシンニューロンをGFPで可視化した個体の脳にキスペプチンに対する免疫組織化学をアプライすることで、形態学的にキスペプチン神経系がバソトシンニューロンに投射していることを示すことができた。 また、前年度までに確立した各種ノックアウト個体の比較を行うことにより、キスペプチン神経系とイソトシン/バソトシン神経系の関係を解析した。現在まで、キスペプチン神経系がなければ、イソトシンあるいはバソトシン神経系が正常に働かない、といった明瞭な結果は出ていない。しかし、今後具体的にイソトシン、バソトシンニューロンの機能をより詳細に解析することにより、イソトシン/バソトシンニューロンのどういった機能にキスペプチン神経系が関与しているのかが明らかになることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルシウムイメージングと形態学的手法を併せて、キスペプチン神経系によるバソトシンニューロンの制御について、その因果関係を生理学的に示すことができた。また、キスペプチン受容体以降のシグナル伝達系についても解析することができた。テトロドトキシンを用いたシナプス遮断実験や、各種チャネルブロッカーを用いた実験を行うことが出来、キスペプチンニューロンによるバソトシンニューロン制御の作用機序の全貌が明らかになる日も近い。 一方で、ノックアウトを用いた解析を開始しているが、こちらに関しては、どこをどのように比較すれば良いのか、両者の特徴的な表現型を詰め切れていない部分がある。各種表現型の解析により、制御する神経系(この場合、キスペプチン神経系)が機能阻害されることと、そのニューロン自体(この場合、バソトシンニューロン)の機能阻害には、なかなかクリアーな相関は見られないということもわかってきた。これは、ニューロンの制御が1対1でないことを考えると、ある意味合理的な結果である。同時並行している、キスペプチン受容体にGFPを発現するメダカを用いたキスペプチン神経系の脳内での機能の網羅的解析も、標的となるニューロンのノックアウト個体も取りそろえ、研究準備は進んでいる。 来年度以降、次世代シーケンサーを用いて、より広い範囲の影響を脳内において探ることにより、バソトシンの機能、およびそれに対するキスペプチン神経系の制御の度合いがわかることになると考えている。全体的には、概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
生理学的な解析により、キスペプチン神経系によるバソトシンニューロンの制御の作用機序が明らかになってきた。今後の課題は、実際どの程度キスペプチン神経系がバソトシンニューロンのバソトシン放出に関与しているのかを明らかにすることが必要であると考えている。現在までに樹立している各種ノックアウトラインの表現型の比較を通し、キスペプチン神経系がバソトシンニューロンにどの程度関与しているのかを、個体レベルで明らかにしたい。 また、次世代シーケンサーを用いた網羅的な解析が可能になってきたので、各種ノックアウト個体の全脳での遺伝子の発現を解析することにより、今まで見つかってこなかった神経ペプチドの機能を解明できるかもしれない。一方で、現在までにキスペプチン神経系は少なくとも真骨魚類の生殖調節に直接的に関与しないことがわかってきている。そこで、キスペプチン神経系の脊椎動物一般での機能の解析に加え、キスペプチン神経系によらない生殖調節メカニズム、hypothalamic-pituitary-gonadal axis調節の解明も、特に真骨魚類において必要となる。今後はこの疑問に関しても、キスペプチン神経系の研究で行っているような、遺伝学的、生理学的、形態学的手法を含めた多角的な解析により、進めていこうと考え、各種トランスジェニックや、ノックアウト個体の準備を進めている。
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Research Products
(11 results)